平成11年6月15日に衆議院本会議において、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が可決・成立し、同月23日に公布されました。この法律は、住宅の品質確保を促進し、住宅購入者等の利益の保護及び住宅に係る紛争の迅速かつ適正な解決を図り、国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とするものです。
住宅に係る紛争は、技術的な専門性が高いこと、原因究明が困難であること等から、従来はともすると紛争処理が遅延し、困難となる場合が多かったのですが、このたび同法の制定により住宅専門の裁判外紛争処理機関(指定住宅紛争処理機関)が設立され、法律、建築の双方の専門家が紛争処理委員として協力して紛争処理に当り、住宅性能表示制度を活用した住宅を対象に、あっせん、調停及び仲裁を行うようになったことは大きな変化であり、意義深いものがあります。
住宅紛争処理技術関連資料集は、同法に基づき住宅紛争処理支援センターが、紛争処理業務支援の一環として策定し、各地域の指定住宅紛争処理機関に提供するものです(支援センターは、平成12年4月13日付けで(財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターが建設大臣の指定を受けています)。紛争処理体制の検討に当っては、建設省が日本弁護士連合会と連携して住宅紛争処理検討協議会を発足させ、住宅専門の裁判外紛争処理体制の整備に関する検討を進めました。同協議会のもとには、住宅紛争処理技術関連資料集等の検討を行うための技術的基準等検討委員会及び技術的基準等検討ワーキンググループが設けられました。住宅紛争処理支援センターの指定後はそれぞれ住宅紛争処理支援業務運営協議会、技術委員会、技術ワーキンググループに改組され、約1年間にわたる精力的な検討を重ねた上、とりまとめを行い、このたび住宅紛争処理技術関連資料集(平成12年度版)として発行する運びとなりました。指定住宅紛争処理機関の紛争処理委員の方々が紛争処理に際して技術的な資料の一つとして本資料集を参考にしてくだされば幸いです。
最後に、この間ご参画いただいた学識経験者、日本弁護士連合会、建築士関連団体、消費者関連団体及び住宅供給者関連団体の各委員等の方々に改めて感謝を申し上げるとともに、この法律に基づく新しい制度が円滑に機能し、住宅に係る紛争が迅速かつ適正に解決され、国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを願ってやみません。
平成12年6月 技術委員会 座長 上 杉 啓