補修方法編

外壁のひび割れ・欠損 ALCパネル下地タイル部分張替え工法 G-2-402
S造
工事概要
  • ALCパネル下地タイル張りにおいて、タイルのひび割れ・欠損、はがれ・浮きが部分的に発生している箇所に対して、既存タイルを撤去し新たにタイルの張替えを行う工法である。
09_S補-03_G-2-402_2_図_2023
タイル部分張替え工法例
(引用:参考文献2一部加筆)
対応する不具合と原因 不具合
  • 外壁のひび割れ、欠損(G-2)
原因
  • 外壁仕上材等の留付方法の不良
  • 外壁仕上材等の割付不良
適用条件
  • 既存タイルと同じ又は美観的に調和できるタイルが用意できる場合に適用する。
  • ALCパネルの取付け構法は、縦壁ロッキング構法または横壁アンカー構法であること。(参考:参考文献1)
  • ALCパネルの厚さは、100㎜以上であること。(参考:参考文献1)
  • 本工法を用いる場合は、タイル張りのひび割れ・欠損、はがれ・浮きがALCパネルの割付目地に関連しない部分であること。(参考:参考文献2)(※1)
  • 建込みにおけるALCパネル相互の目違いが6㎜以内であること。(参考:参考文献3、参考文献4)
工事手順の例

(既存のタイル張り付け材がセメントモルタルの場合)

1.事前調査
現場調査により適用条件を満たしていることを確認する。
タイル張りのひび割れ、はがれ等の状況を確認し、工事計画を立てる。
2.足場の設置
必要に応じて足場を設置し、撤去時に発生する粉塵が隣地に飛ばないようその外回りに防塵シートを張る。
3.タイルの撤去
張替え部と健全部の縁を切るためタイル用カッター等を用いて張替え部の周辺を切断する。(参考:参考文献2)
張替え部のタイルおよびモルタルを撤去する。(※2)
撤去した範囲にALCパネルの割付け目地がある場合は、「ALCパネル下地タイル伸縮調整目地新設工法(S造G-2-403)」による。

3から
セメントモルタル張りの場合
4.セメントモルタル張りタイル下地の施工
気温が5℃以下、または施工後5℃以下になると予想される場合は、施工は行わない。(引用:参考文献3)
次の下地の確認を行い、適合しない場合は適合するよう処理する。(参考:参考文献3)
  • ALCパネルの不陸がある場合は④による
  • ALCパネル表面が雨水等により著しく濡れていないこと
  • ALCパネル表面にほこり、異物、ALC粉等が付着していないこと
吸水調整材のみの塗布、または吸水調整材を塗布したのちJIS A 6916(建築用下地調整塗材)に規定するセメント系下地調整厚塗材2種(CM-2)(下地調整材ともいう)を塗り付ける。(参考:参考文献3)
不陸がある場合は、JIS A 6916(建築用下地調整塗材)に規定するセメント系下地調整厚塗材2種(CM-2)(不陸調整材ともいう)を塗り付ける。(参考:参考文献3)
5.タイルの張付け
タイルは、裏あしを有しその形状が「あり状」のものとする。(参考:参考文献3)
タイルの張付けは、JIS A 6916(建築用下地調整塗材)附属書A(タイル張付け用モルタルの品質)における「試験用タイル張付け用モルタルの品質」に適合する既製調合ポリマーセメントモルタルを用いて、目地通りよく張り付ける。(参考:参考文献3)
  • タイル張り工法は、表紙張りユニットタイル(50角や50二丁、50三丁、50四丁など)の場合、モザイクタイル張りとし、一枚張りのタイル(100×100mmや60×200㎜など)の場合は、密着張りとする。(引用:参考文献3)
モザイクタイル張り(引用:参考文献3) 密着張り(引用:参考文献3)
6へ
3から
外装壁タイル接着剤張りの場合
4.外装壁タイル接着剤張り下地の施工
気温が5℃以下、または施工後5℃以下になると予想される場合は、施工は行わない。(引用:参考文献4)
次の下地の確認を行い、適合しない場合は適合するよう処理する。(参考:参考文献4)
  • ALCパネルの不陸がある場合は④による
  • ALCパネル表面が雨水等により著しく濡れていないこと
  • ALCパネル表面にほこり、異物、ALC粉等が付着していないこと
吸水調整材を塗布したのちJIS A 6916(建築用下地調整塗材)に規定するセメント系下地調整塗材2種(C-2)(下地調整材ともいう)を塗り付ける。(参考:参考文献4)
不陸がある場合は、JIS A 6916(建築用下地調整塗材)に規定するセメント系下地調整厚塗材2種(CM-2)(不陸調整材ともいう)を塗り付ける。(参考:参考文献4)
5.タイルの張付け
タイルの張付けは、JIS A 5557:2020(外装タイル張り用有機系接着剤)に適合する変成シリコーン樹脂系一液反応硬化形またはウレタン樹脂系一液反応硬化形を用いて、目地通りよく張り付ける。(参考:参考文献4)
6へ
6.養生
モルタルや接着剤の硬化養生を行う。
7.目地詰め
    (※3)
タイル張り後24時間以上経過したのち目地詰めを行う。(参考:参考文献3、参考:参考文献4)
目地モルタルを混練りし、塗り込んで仕上げる。
8.養生・清掃
目地モルタルの養生を行う。タイル表面に付着した余分なモルタルはぬぐい取り十分清掃する。
9.最終確認
工事全体の仕上がりを目視で確認するとともに打診よる確認を行う。
防塵シートを取外し、足場を撤去の上、片付け・清掃を行う。
備考 施工上の注意点

(※1)タイル張りのひび割れ・欠損、はがれ・浮きがALCパネルの割付目地に関連する場合はS造G-2-403(ALCパネル下地タイル伸縮調整目地新設工法)による。

(※2)張替え部のタイルおよびモルタルを撤去する際、ALCパネル下地面の破損が生じた場合は、RC造S造G-2-704(充填工法(ALCパネル))により破損部の修復を行い、充填した修復材の養生期間を十分にとったのち、「5.工事手順の例」の「4.セメントモルタル張りタイル下地の施工」又は「4.外装壁タイル接着剤張り下地の施工」の作業を行う。


09_S補-03_G-2-402_6_2図_2023
ALCパネル下地面の破損が生じた場合の工事概要(引用:参考文献2 一部加筆)

(※3)外装壁タイル接着剤張りの場合は、タイルに目地を詰める場合と、タイルに目地を詰めない場合があり、伸縮調整目地の納まりが異なる。また、接着剤を目地として露出させる場合には、耐候性に優れ変退色の少ない接着剤を選定する配慮が必要である。(参考:参考文献4)

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 建築工事標準仕様書・同解説 JASS19 セラミックタイル張り工事(2022)[p151] (一社)日本建築学会 (一社)日本建築学会
2 ALC外壁補修工法指針・同解説(第2版)[p40~41、p74~75] 日本建築仕上学会
ALC外壁補修工法研究委員会
日本建築仕上学会
3 ALCパネル現場タイル張り工法指針・同解説(第4版)[p25~27,31~33,35~39] 日本建築仕上学会
ALCパネル現場タイル張り研究委員会
日本建築仕上学会
4 ALCパネル現場タイル接着剤張り工法指針・同解説(第2版)[p72~75,79~82,84~86,p90~93] 日本建築仕上学会
ALCパネル現場タイル張り研究委員会
日本建築仕上学会
5 JIS A 6916:2021 建築用下地調整塗材[附属書A タイル張付け用モルタルの品質] 揖斐敏夫 (一財)日本規格協会
6 JIS A 5557:2020 外装タイル張り用有機系接着剤[4.種類] 揖斐敏夫 (一財)日本規格協会