• 適切に設計・施工された住宅であっても、軽微な屋根の変形は発生することがある。また、下地等の不具合事象を伴わず屋根ふき材そのもののはがれ・ずれ・浮き等が生じる場合もある。
• 屋根に発生した不具合事象の程度を確認し、小屋組および壁枠組の変形に起因するものであるか、他の不具合事象に起因するものであるかを確認する。

１．目視による確認

（１）調査方法

• 近隣に当該住宅の屋根面を見ることができる高い場所がある場合は、そこから屋根を観察する。屋根面を見ることができる場所がない場合には、道路に出る等、建物から少し離れて観察する。
• 肉眼では見えにくい場合は、双眼鏡を用いて、棟の線、平面部分のふくれ、変形等を確認する。
• １階の屋根部分に不具合がある場合は、２階から観察を行う。
• 高所観察用ビデオカメラ等も活用するとよい。
• 観察後、変形の状況を立面図および平面図に記載する。

（２）注意事項等

• 特になし

• 屋根面の棟の通りが一直線になっておらず、たわみ・むくりやうねり、ゆがみ、波打ち等の変形を生じている場合は、小屋組の変形に起因する屋根の変形である可能性がある。
• 軒の通りに変形を生じている場合は、軒のたるきの変形に起因する変形である可能性がある。
• 屋根面にたわみが生じている場合は、小屋組または屋根下張材がたわみ等の変形を起こしている可能性がある。
• 棟の通りや軒の通りに変形が無く、屋根面にたわみも生じていない場合は、屋根ふき材やその施工に起因するはがれ、ずれ、浮き等の可能性がある。

• 双眼鏡
• 高所観察用ビデオカメラ

• 屋根を支えている垂直構面である外壁の傾斜を確認し、外壁または建物全体が傾斜しているかを確認する。

１．壁の鉛直方向の傾きの測定

（１）調査方法

• 外壁の全ての面で下げ振りによる傾斜測定を行う。
  ＜詳細は［外壁の傾斜1］に準ずる＞

（２）注意事項等

• 外壁等が傾斜している場合は、外壁または建物全体の傾斜が原因で屋根が変形している可能性が高い。

• ［外壁の傾斜1］ に準ずる。

• 小屋組が適切に設計されているかを確認する。

１．小屋組の設計内容の確認

①

小屋組材の断面寸法等（ａ．ｃ．ｅ．☆１．※１．※２）

②

材料の選択（ｂ．ｃ．ｄ．ｅ．ｆ．☆１．※１．※２）

③

水平構面の剛性確保の仕様（ａ．ｃ．ｅ．☆１．※１．※２）

④

木材の基準強度（ｂ．ｄ．ｆ．）

⑤

小屋組材の配置・支持間隔（ｃ．ｅ．☆1．※１．※２）

⑥

小屋組の架構・接合方法（ａ．ｃ．ｅ．☆1．※１．※２）

（１）調査方法

• 設計図書（設計図、仕様書等）を用いて上記＜確認のポイント＞に沿って、各部材の断面寸法・配置等が適切であるかを確認する。なお、適切であるかの検討にあたっては、関係法令告示、建設住宅性能評価関連図書等により、また(独)住宅金融支援機構編集「枠組壁工法住宅工事仕様書」、その他の仕様書、基準等が参考となる。
• 確認対象範囲は小屋裏、軒裏とし、対象部材は小屋組構成部材（「たるき」「屋根梁」「たるきつなぎ」「トラス」等）とする。
• ＜確認のポイント＞に沿って確認する主な項目を以下に列記する。

  ①

  小屋組材の断面寸法等

  • たるき、屋根梁、たるきつなぎ、トラス等（ａ．ｃ．ｅ．☆１．※１．※２）
  • 許容応力度計算結果またはその結果に基づくスパン表への適合（☆１．※１）

  ②

  材料の選択

  • 許容応力度計算結果またはその結果に基づくスパン表への適合（ｂ．ｃ．ｄ．ｅ．ｆ．☆１．※１．※２）
  • 材料強度（材料の基準強度）（ｂ．ｄ．ｆ．）

  ③

  水平構面の剛性確保の仕様（ａ．ｃ．ｅ．☆１．※１．※２）

  ④

  木材の基準強度（ｂ．ｄ．ｆ．）

  ⑤

  小屋組材の配置・支持間隔

  • 許容応力度計算結果またはその結果に基づくスパン表への適合（ｃ．ｅ．☆１．※１．※２）

  ⑥

  小屋組の架構・接合方法

  • たるきと屋根梁の接合部とたるきと頭つなぎの接合部（ａ．ｃ．ｅ．☆１．※１．※２）

（２）注意事項等

• 各部材の材種、寸法は、荷重条件および外力の条件（固定荷重、積載荷重、積雪荷重、風圧力、地震力）に応じて計算することが求められており、これが適切に設定されている必要がある。
• スパンに応じて各部材の必要な断面寸法が求められることから、小屋組を構成する各部材のスパンに応じた部材断面寸法が適切であるかを確認する。
• また、樹種により使用するスパン表が異なるため、樹種に対応した断面寸法を確認するように注意する。
• スパン表によらない場合は、構造計算(許容応力度等計算等)により確認する。

a.

建基法令第８０条の２第１号

b.

建基法令第８９条

c.

平13国交告第1540号「枠組壁工法又は木質プレハブ工法～」

d.

平12建告第1452号「木材の基準強度～」

e.

平13国交告第1541号「構造耐力上主要な部分である壁および床版に、枠組壁工法～」

f.

平13国交告第1024号「特殊な許容応力度及び特殊な材料強度を定める件」

☆1

平13国交告第1347号「評価方法基準」第5の1「構造の安定～」

※１

「ツーバイフォー住宅の住宅性能表示制度・長期優良住宅認定制度利用の手引」（2015）(一社)日本ツーバイフォー建築協会発行）

※２

「2002年枠組壁工法建築物スパン表」（枠組壁工法建築物スパン表編集委員会編集・(社)日本ツーバイフォー建築協会発行）

• 「枠組壁工法住宅工事仕様書　2023年版」p127　(4.12) （(独)住宅金融支援機構編著、(株)井上書院発行）

• 次のいずれかの事項について、適切な設計が行われていない場合は、小屋組を構成する各部材の鉛直荷重に対する支持が不十分なことが原因である可能性が高い。

  ①

  小屋組材の断面寸法等

  ②

  材料の選択

  ③

  水平構面の剛性確保の仕様

  ④

  木材の基準強度

  ⑤

  小屋組材の配置・支持間隔

  ⑥

  小屋組の架構・接合方法

• 特になし

• 小屋組が適切に施工されているかを確認する。

• 次のいずれかの事項について、適切な施工が行われていない場合は、小屋組を構成する各部材の鉛直荷重に対する支持が不十分なことが原因である可能性が高い。

  ①

  小屋組材の断面寸法等

  ②

  材料の選択

  ③

  材料の品質

  ④

  水平構面の剛性確保の仕様

  ⑤

  木材の基準強度

  ⑥

  小屋組材の配置・支持間隔

  ⑦

  小屋組の架構・接合方法

• スケール

• 屋根ふき材および下ぶき材が適切に施工されているかを確認する。

• 屋根葺材にはがれ、ずれ、浮きが見られる場合で、留付け状態に不備がある場合等は、施工不良が原因である可能性が高い。
• 屋根葺材が一様に破損している場合等は、地域の気候条件に適合していない材料を使用している可能性もある。

• スケール

• 竣工後に屋根面への重量物の設置、不用意な歩行等、不適切な使用・メンテナンス状況がなかったかを確認する。

１．目視等による過荷重の有無、補強等の確認

（１）調査方法

• 屋根の変形している部分に、太陽熱温水器や太陽光発電システム、ベランダ等の重量物があるかどうか目視により確認する。
• 重量物があった場合は、設置された時期を居住者に確認する。
• 屋根面および小屋裏（天井裏）より、重量物周辺部の補強の有無を目視により確認する。
• 屋根面の人の不用意な歩行等の有無、箇所、程度を居住者に確認する。

（２）注意事項等

• 特になし

• 「既存住宅の瑕疵担保責任保険施工・検査基準（住宅用太陽電池モジュール設置工事編）」国土交通省住宅局ホームページ

• 「住宅瑕疵担保責任保険[現場検査]講習テキスト（リフォーム瑕疵保険＆既存住宅売買瑕疵保険）」(2010)（国土交通省住宅局、（一社）住宅瑕疵担保責任保険協会・発行）

• 「住宅用太陽光発電システム設計・施工指針」平成19年3月（住宅用太陽光発電システム施工品質向上委員会編集）

• 「太陽光発電システムの設計と施工（改訂5版）」（(一社）太陽光発電協会編/(株)オーム社発行）

• 「戸建住宅の太陽光発電システム設置に関するＱ＆Ａ」（令和5年4月）（(一社）環境共生住宅推進協議会発行）

• 重量物が設置されている場合は、重量物の荷重によって屋根の変形が発生している可能性が高い。
• 重量物を竣工後設置した場合は、使用上の問題もしくは重量物設置時の補強の不備等の配慮不足が原因である可能性が高い。
• 設計時に想定することができた重量物である場合は、補強不足が原因で屋根の変形が発生している可能性が高い。
• 屋根の変形している周辺に人の不用意な歩行等があり、変形が部分的である場合は、人の歩行等によって屋根の変形が発生している可能性が高い。

• 特になし