1.室内空気の汚染とは住宅に使用されている建材等から発散される化学物質等による健康への影響が問題として指摘されている。化学物質と健康影響との因果関係に未解明の部分が多くあるなど、課題も多いものとなっている。このため、関連する諸研究の進展が期待されるほか、消費者の不審や懸念に対する的確な相談などの対応も求められている。 室内空気の汚染が生じる原因の一部として、建材や接着剤、塗料、防虫剤、防腐剤等から発散するホルムアルデヒドや揮発性有機化合物(以下VOC(*1)とする。トルエン、キシレンなど)がある。さらに、住宅の気密性が向上したこと、ライフスタイルの変化(例えば窓を閉めてエアコンを使用することによる換気不足)等の状況も複合的に関連していることが考えられる。 また、原因の判定等に当たっては、化学物質による健康影響の現れ方にはかなりの個人差があること、室内に発散する化学物質の種類が多い上に、それぞれの濃度は比較的低いので、化学物質の測定機器や測定技術に高度のものが要求されること、室内の温度、湿度、換気方法、使われ方等の条件変動によって濃度が変わること、室内汚染物質の発生源は多様で、持ち込まれる家具、調度品はもちろん、燃焼器具からの発生ガス、喫煙による煙、生活用品等、建材以外のものからも原因になっている可能性があること等を総合的に勘案して対応する必要がある。 建材等から発散される化学物質等により居住者が「シックハウス症候群」(*2,3,4)や「化学物質過敏症」、「MCS」(*5,6)と呼ばれる症状になる場合がある。 現在、化学物質の室内濃度の目安として厚生労働省が発表している濃度指針値(*7)があるが、仮に室内濃度が指針値を超えていたとしても、居住者が必ずシックハウス症候群になるということではない。また、指針値以下であっても居住者がシックハウス症候群になる場合もある。これは、居住者の体質や体調やこれまでの化学物質に関する履歴などにかなり個人差があるためと考えられる。 そのような点についても十分留意して室内汚染や健康影響に対処することが必要である。 2.シックハウス対策について
(対策Ⅰ)内装仕上げの制限建築基準法令(告示)により、17品目の建材が内装仕上げへの使用が制限されている。(これを「告示対象建材」とよぶ(「資料3 告示対象建材等について」の「(1)告示対象建材」の項を参照)ホルムアルデヒドを発散するおそれがあるものとして、指定された17品目の建材のそれぞれについて、ホルムアルデヒドの発散量の少ないほうから、規制対象外建材(F☆☆☆☆)、第3種ホルムアルデヒド発散建築材料(F☆☆☆)、第2種ホルムアルデヒド発散建築材料(F☆☆)、第1種ホルムアルデヒド発散建築材料の4つに区分する。その材料を居室の仕上材あるいは建具の室内側に使用する場合、規制対象外建材は制限なく使用できるが、第3種建材及び第2種建材は別途に定められた計算式にもとづいて、使用面積が制限される。第1種建材は内装仕上材としては使用が禁止されている。 |
(*1) VolatileOrganicCom poundsの略称で、空気中に揮発する有機化合物全体を指すものである。しかし、範囲が広く漠然としているので、WHOでは室内空気汚染の観点から有機化合物の沸点をもとにVOCを定義している。 (*2) 住宅の高気密化や化学物質を放散する建材・内装材の使用等により、新築・改修後の住宅やビルにおいて、化学物質による室内空気汚染等により、居住者の様々な体調不良が生じている状況が数多く報告されている。症状が多様で、症状発生の仕組みをはじめ、未解明な部分が多く、また様々な複合要因が考えられることから、シックハウス症候群と呼ばれる。(厚生労働省「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会 中間報告第1~第3回のまとめについて」平成12年6月) (*3) 居住者の健康を維持するという観点から問題のある住宅においてみられる健康障害の総称で、医学的に確立した単一の疾患ではない。主な症状として、皮膚や眼、咽頭などの皮膚・粘膜刺激症状、全身の倦怠感、頭痛、頭重等の不定愁訴などがある。(厚生労働省「室内空気健康影響研究会報告書」平成16年2月) (*4) 診療報酬請求の病名リストに、シックハウス症候群は登録されている。病名整理番号は20084310。((一財) 医療情報システム開発センター) (*5) 国際的には“MCS (Multiple Chemical Sensitivity:多種化学物質過敏状態)”、日本では“化学物質過敏症”の名称が一般に使用されている。微量の化学物質に反応し、非アレルギー性の過敏状態の発現により、精神・身体症状を示すとされ、病態や発症機序については未解明な部分が多い。感度や特異性に優れた臨床検査方法及び診断基準が開発されることが必要とされる。(厚生労働省「室内空気健康影響研究会報告書」平成16年2月) (*6) 診療報酬請求の病名リストに、化学物質過敏症は登録されている。病名整理番号は20093547。((一財)医療情報システム開発センター) (*7) 指針値は、現時点で入手可能な毒性に係る科学的知見から、ヒトがその濃度の空気を一生涯にわたって摂取しても、健康への有害な影響を受けないであろうと判断される値を算出したものであり、その設定の趣旨はこの値までは良いとするのではなく、指針値以下が望ましいということである。
「住宅づくりのためのシックハウス対策ノート(18年版)」(シックハウス対策ノート編集委員会監修、(財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター)p14~15 |
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ホルムアルデヒド発散建築材料の基準、制限等
N2S2 + N3S3 ≦ A ――――計算式
(第2種分) (第3種分)
ただし、これらの建材を張り合せたり、化粧加工する際に、告示対象建材(規制対象外建材を除く)である接着剤を使用した場合には、規制対象となる場合があるので注意が必要である。 |
(*8) 通常の居室の他、隣接する居室と換気計画上一体と見なされる廊下、収納スペースなどの仕上材は、同じ制限を受ける。 |
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(対策Ⅱ)換気設備設置の義務付けホルムアルデヒドを発散する建材を使用しない場合でも、家具等からの発散があるため、原則として住宅に機械設備等の措置が義務付けられる。住宅の居室では、換気回数0.5回/h(*9)以上の機械換気設備(いわゆる24時間換気システムなど)を設置しなければならない。 24時間換気システムの一例(chord作成) (対策Ⅲ)天井裏等の制限機械換気設備を設ける場合には、天井裏、床下、壁内、収納スペースなど(「天井裏等」と呼ぶ)から居室へのホルムアルデヒドの流入を防ぐため、次の①~③のいずれかの措置が必要。ただし、収納スペースなどであっても、建具にアンダーカット等を設け、かつ、換気計画上居室と一体的に換気を行う部分については、居室とみなされ、対策Ⅰの対象となる。 |
(*9) 居室の容積と同じ量の空気が1時間で入れ替わるだけの換気量がある場合を、換気回数1回/hとする。0.5回/hはその半分。 |
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(*10) 居室の周囲をプラスチックフィルムなどで隙間なく覆うこと。 (*11) 間仕切り壁などの表面や上下部分を気密性のある材料でふさぐこと。 |
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ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレンなお、建築基準法では、化学物質の濃度測定について義務づけられてはいない。
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(*12) 日本住宅性能表示基準(平13国交告1346号)に定義され、評価方法基準(平13国交告1347号)第5の6-1(2)イに規定されている。日本産業規格(JIS)及び日本農林規格(JAS)において、ホルムアルデヒドの発散量によって等級が定められ表示等が実施されている材料で、パーティクルボード、MDF、合板、構造用パネル、フローリング、集成材、単板積層材、壁紙、塗料、接着剤、保温版、断熱材、仕上塗材等をさす。平14国交告1113号に規定される告示対象建材と同等である。 (*13) 内装のみの等級で天井裏等には適用しない (*14)
日本住宅性能表示基準において、厚生労働省で指針値が定められている化学物質のうち、濃度表示を申請した場合に、測定することが定められている化学物質。 |
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3.室内空気汚染の発生原因室内空気の汚染は、一つの原因によらず複数の要因によっていることが多いため、調査結果を踏まえて、慎重に判断する必要がある。
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通気止めの設計例について 「住宅づくりのためのシックハウス対策ノート(18年版)」(シックハウス対策ノート編集委員会監修、(財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター)p27 「改正建築基準法の対応した 建築物のシックハウス対策マニュアル」(国土交通省住宅局建築指導課 他編集)p 245 |
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1.室内空気の汚染状況等の確認「シックハウス相談チェックシート」(以下チェックシートという)を参考に、室内空気の汚染状況の確認、原因を推定するために必要と思われる基本情報(居住者の症状、発症時期、室内の状況、住まい方等)の収集、整理を行う。
■シックハウス相談チェックシート□住まい手の属性
□建物の概要
□設計段階に関する情報確認
□部屋の区分と主な仕様
□換気の状況
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□健康影響等の状況
□日常生活の状況
□室内空気質の測定
その他
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(*15) アレルギー疾患は外部からの刺激(抗原:アレルゲン)と生体を守ろうとする抗体が結合(反応)して抗原の働きを止め、無毒化する反応を抗原抗体反応というが、この疾患は、激しい抗原抗体反応によって起こる疾患のことである。 例:皮膚及び粘膜に見られるアレルギー性疾患 ・皮膚:アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎 ・粘膜:花粉症、アレルギー性鼻炎、気管支喘息 (*16) 燃焼に室内の空気を使用し、燃焼ガス(一酸化炭素や窒素酸化物等)も室内に排気する開放型のストーブやファンヒーター。 (*17) 室外から吸気し、燃焼ガス(一酸化炭素や窒素酸化物等)も室外へ排気する密閉型ストーブやファンヒーターのことである。その中でも吸気部に小型のファンを付け、強制的に通風し壁から離れた位置にも設置可能なものをFF式燃焼機器という。 (*18) 簡易測定法はその場で検査結果が得られる。精密測定法は、厚生労働省が定めた「室内空気中化学物質の測定マニュアル」に示された方法等で、現場で結果は得られない。 |
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2.室内空気の測定内容・状況の確認
■ 測定内容・状況確認シート
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(2)性能表示制度による評価内容の確認
3.調査結果の保存
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「住宅づくりのためのシックハウス対策ノート(18年版)」(シックハウス対策ノート編集委員会監修、(財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター)p3 「改正建築基準法に対応した 建築物のシックハウス対策マニュアル」(国土交通省住宅局建築指導課 他編集)p124 |
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1.設計内容の確認
(1)調査方法
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令第20条の7第1項第一,二号、平14国交告1113号~1115号に定められた、ホルムアルデヒドを発散する17品目の建材。ホルムアルデヒドの発散速度により等級が定められ、内装仕上げへの使用が制限される。 (*20) ホルムアルデヒドの発散がほとんど認められないことから、制限を受けることなく、居室の内装材として、使用できる。 |
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(2)注意事項等
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1.書類による確認
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(1)調査方法(参考11)
2.目視等による施工状況の確認
(2)注意事項等
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1.評価内容の確認(1)調査方法
(2)注意事項等
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「住宅づくりのためのシックハウス対策ノート(18年版)」(シックハウス対策ノート編集委員会監修、(財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター)p3 |
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1.使用状況等の確認(目視等による確認)(1)調査方法(参考12)
(2)注意事項等
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「住宅づくりのためのシックハウス対策ノート(18年版)」(シックハウス対策ノート編集委員会監修、(財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター)p75~78 (*21) 計画換気とは、常時出入り口を明確にして必要な量の新鮮空気を取り入れ、汚れた空気を排出することである。その方法として機械換気と自然換気がある。自然換気は、室内外温度差に基づく空気の密度差を利用する重力換気と、風圧力を利用する風力換気とに分けられる。自然換気は、自然力に依存しているため、動力を必要としないという利点はあるが、条件によっては期待される換気量を確保できない場合があるので、採用する際にはその点を考慮する必要がある。 機械換気の種類には以下の3つがある。 第1種機械換気(機械給排気型):機械給気と機械排気を用いる換気システムで、熱交換器や冷暖房システムとの組合せが可能である。特徴として確実な換気量が確保できることがあげられる。 第2種機械換気(機械給気型):機械給気と適当な自然排気口との組合せで構成される換気システム。このシステムを使用する場合、室内が正圧となる。したがって、壁体内に結露が生じる可能性が高くなるので、その点の対応を考えておく必要がある。 第3種機械換気(機械排気型):機械排気と適当な自然給気口を組合せることによって構成される換気システムである。この換気方式を使用する場合には、住宅の気密性を高めることが必要である。 「住宅づくりのためのシックハウス対策ノート(18年版)」(シックハウス対策ノート編集委員会監修、(財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター)p78 (*22) テーブルは、ダイニングテーブルや食卓用のテーブルなどとし、机は勉強机や作業机などとします。 「住宅づくりのためのシックハウス対策ノート(18年版)」(シックハウス対策ノート編集委員会監修、(財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター)p75~78 |
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「電気用品の技術上の基準を定める省令の一部改正について(改正の概要)」(経済産業省商務情報政策局製品安全課)平成21年9月11日経済産業省令第57号 経済産業省ホームページ 経済産業省通達「電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈について」別表第八 電気用品安全法施行令 別表第一第六号から第九号まで及び別表第二第七号から第十一号までに掲げる交流用電気機械器具並びに携帯発電機p49~50 経済産業省ホームページ |
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1.近隣の状況の確認(1)調査方法
(2)注意事項等
2.調査結果の記録調査結果記録シートの備考欄に調査結果を記録しておく。 |
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1.調査結果による判断(1)調査方法
(2)注意事項等
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1 現場調査(参考16)
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「住宅づくりのためのシックハウス対策ノート(18年版)」(シックハウス対策ノート編集委員会監修、(財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター) 参考資料⑨ p118 |
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2 室内濃度の再測定(1)測定方法の種類(参考17)
(2)精密測定法
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「住宅づくりのためのシックハウス対策ノート(18年版)」(シックハウス対策ノート編集委員会監修、(財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター) p3~6 (*23)
本表以外のシックシックハウスに関する測定方法については以下の文献を参照できる。 「日本建築学会環境基準 AIJES-A0001-2014 ホルムアルデヒドによる室内空気汚染に関する設計・施工等規準・同解説」第2版2014年p39 解説表5.1(2013年4月現在)((一社)日本建築学会発行) (*24) 厚生労働省の「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会中間報告書-第6回及び第7回のまとめ」別添3「室内空気中化学物質の測定マニュアル」厚生労働省HP 生衛発第1093号生活衛生局長通知(平成12年6月30日) (*25) 新築住宅とは、新たに建設された住宅で、まだ人の居住の用に供したことのないもの(建設工事の完了の日から起算して1年を経過したものを除く)をいう。 既存住宅とは、新築住宅以外の住宅をいう。 居住住宅とは、居住状態(日常生活状態)にある住宅をいう。 (*26) アクティブ法の場合はこの方法でTVOC換算が可能である。また測定可能物質以外も測定が可能である。 |
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室内濃度の測定方法に関する日本産業規格(JIS)
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「室内空気中化学物質の測定マニュアル」(厚生労働省シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会)2.測定時刻及び場所について<解説> |
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ホルムアルデヒド及び個別の揮発性有機化合物(VOC)の標準的な採取方法、測定方法については、次表の厚生労働省の「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会中間報告書-第6回及び第7回のまとめ」別添3の「室内空気中化学物質測定マニュアル(標準法)」を参考にする。
他、JIS A 1960:2015(サンプリング通則)、JIS A 1961:2015(ホルムアルデヒドのサンプリング方法)、JIS A 1962:2015(ホルムアルデヒド、アクティブ法)、JIS A 1964:2015(VOCのサンプリング方法)、JIS A 1965:2015(VOC、TenaxTA®を用いたアクティブ法)、JIS A 1966:2015(VOC、加熱脱離、アクティブ法)、JIS A 1968:2015(VOC、溶媒抽出、アクティブ法)を参考にすること。
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「住宅づくりのためのシックハウス対策ノート(18年版)」(シックハウス対策ノート編集委員会監修、(財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター)p4 (*27) クロマトグラフは、複雑に混合した状態で存在している多数の微量有機化合物を細かく分離して、個々の化合物の存在量を調べることを可能する装置を利用した分析方法で、精密測定では一般的に用いられている方法である。クロマトグラフ法は大きな面積を有する固定相と呼ばれる部分と、これに接して流れる移動相との間に、分離すべき成分を分配させる物理的な方法である。成分が含まれた試料が液体状か気体状かの違いにより液体クロマトグラフ法とガスクロマトグラフ法に分類される。 「住宅性能表示制度 日本住宅性能表示基準・評価方法基準 技術解説(新築住宅)2022」p385(国土交通省住宅局住宅生産課、国土交通省国土技術政策総合研究所、国立研究開発法人建築研究所監修/(一財)日本建築センター編集、工学図書(株)発行) (*28)
TVOCは、JIS A 1965:2015において、「吸着管Tenax TAでサンプリングした場合の、水素炎イオン化検出器又は質量分析計を用いて無極性のキャピラリーカラムでn-ヘキサンとn-ヘキサデカンの範囲で溶出・検出される、クロマトグラムピーク面積の合計をトルエン相当量に換算した値としている。なお、サンプリング方法や分析方法に依存することを考慮すること。」と記載されている。 「住宅づくりのためのシックハウス対策ノート(18年版)」(シックハウス対策ノート編集委員会監修、(財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター)p5 |
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ホルムアルデヒド及び個別の揮発性有機化合物(VOC)の標準的な採取方法、測定方法については、JIS A 1960:2015(サンプリング通則)、JIS A 1961:2015(ホルムアルデヒドのサンプリング方法)、JIS A 1963:2015(ホルムアルデヒド、パッシブ法)、JIS A 1964:2015(VOCのサンプリング方法)、JIS A 1967:2015(VOC、加熱脱離、パッシブ法)、JIS A 1969:2015(VOC、溶媒抽出、パッシブ法)を参考にすること。
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「JIS A 1963:2015(室内空気中のホルムアルデヒドの定量-パッシブサンプリング)」附随書A 図A.2,図A.3(一財)日本規格協会発行 「住宅性能表示制度 日本住宅性能表示基準・評価方法基準 技術解説(新築住宅)2022」p386(国土交通省住宅局住宅生産課、国土交通省国土技術政策総合研究所、国立研究開発法人建築研究所監修/(一財)日本建築センター編集、工学図書(株)発行) |
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(3)簡易測定法(参考22)
(4)調査結果の保存について
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「住宅づくりのためのシックハウス対策ノート(18年版)」(シックハウス対策ノート編集委員会監修、(財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター)p6 |
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3 対象部位や建材の測定
小形チャンバー法による建材からの化学物質発散速度の測定(引用10) 4 換気の不足が原因と考えられる場合(引用10)
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「住宅づくりのためのシックハウス対策ノート(18年版)」(シックハウス対策ノート編集委員会監修、(財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター)参考資料⑨ p118~119 |
①データNo. | ||||
②測定室名 | ||||
測定室の方位及び日射侵入の有無 | ||||
③測定手順・測定方法 | 換気時間と温度、湿度 | : ~ : ~ ℃
~ %
平均室温 ℃
平均湿度 %
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: ~ : ~ ℃
~ %
平均室温 ℃
平均湿度 %
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: ~ : ~ ℃
~ %
平均室温 ℃
平均湿度 %
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閉鎖時間と温度、湿度 | : ~ : ~ ℃
~ %
平均室温 ℃
平均湿度 %
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: ~ : ~ ℃
~ %
平均室温 ℃
平均湿度 %
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: ~ : ~ ℃
~ %
平均室温 ℃
平均湿度 %
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採取時間と温度、湿度 | : ~ : ~ ℃
~ %
平均室温 ℃
平均湿度 %
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: ~ : ~ ℃
~ %
平均室温 ℃
平均湿度 %
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: ~ : ~ ℃
~ %
平均室温 ℃
平均湿度 %
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採取位置 | ||||
採取方法 | ||||
採取機器名 | ||||
④対象物質名 | ||||
⑤分析会社名又は分析者 | ||||
測定結果 | ppm mg/m3 |
ppm mg/m3 |
ppm mg/m3 |
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⑥測定時 室内条件 |
暖冷房 | 無 有(運転、停止) | 無 有(運転、停止) | 無 有(運転、停止) |
換気 | 無 有(運転、停止) | 無 有(運転、停止) | 無 有(運転、停止) | |
喫煙 | 無 有( 本/時) | 無 有( 本/時) | 無 有( 本/時) | |
在室者 | 無 有( 人) | 無 有( 人) | 無 有( 人) | |
⑦隣室 | 在室者 | 無 有( 人) | 無 有( 人) | 無 有( 人) |
外気 濃度 |
ppm mg/m3 |
ppm mg/m3 |
ppm mg/m3 |
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平均温度 | ℃ | ℃ | ℃ | |
平均湿度 | % | % | % | |
⑧外気 | 平均風速 | m/s | m/s | m/s |
平均風向 | ||||
気密性能 | cm2/m2 | cm2/m2 | cm2/m2 | |
換気回数 | 回/h | 回/h | 回/h | |
換気方式 | ||||
⑨気密性 | ||||
⑩備 考※ |
立地: | □郊外 □都市域 □都心 |
交通量: | □多い □少ない |
地域: | □小規模工場がある場合(種類 距離 ) |
大気汚染源: | □なし □あり (種類 距離 ) |
土壌汚染: | □なし □あり ( ) |
日当たり: | □よい □ふつう □悪い |
通風: | □よい □ふつう □悪い |
その他: | 特記事項 ( ) |
最近3ヶ月以内に改修したか | □しない □した(内容: ) |
最近3ヶ月以内に家具を購入したか | □しない □した(種類・個数・使用室: ) |
室名 | |||||||
材質 | |||||||
サッシ | |||||||
ガラス | |||||||
気密性 | |||||||
大きさ | |||||||
方位 |
室名 | |||||
種類 | |||||
台数 | |||||
使用状況 | 設定 % | 設定 % | 設定 % | 設定 % | 設定 % |
室名 | |||||
種類 | |||||
使用状況 |
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測定法と使用する検査機器の整理表
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資料1 化学物質について汚染物質には様々なものがあるが、本資料においては厚生労働省が室内濃度指針値(引用11)を定めている13物質(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、パラジクロロベンゼン、テトラデカン、クロルピリホス、フェノブカルブ、ダイアジノン、フタル酸ジ-n-ブチル及びフタル酸ジ-2-エチルヘキシル)について取り上げる。<参考1> 厚生労働省の「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」において、「室内濃度に関する指針値の概要」について以下のように記載されているため抜粋する(引用11)。 『指針値の策定は、室内空気環境汚染の改善又は健康で快適な空気質の確保を目的としている。我々はその生活の大部分を室内空間で過ごす訳であり、健康で快適な空気質を享受することは、一般国民の権利である。従って、基本的には、室内空気環境中に存在する可能性のある物質は全て指針値策定の対象となり得る。指針値の適用範囲は、特殊な発生源がない限り全ての室内空間が対象となる。 ここで示した指針値は、現時点で入手可能な毒性に係る科学的知見から、ヒトがその濃度の空気を一生涯にわたって摂取しても、健康への有害な影響は受けないであろうと判断される値を算出したものである。これらは、今後集積される新たな知見や、それらに基づく国際的な評価作業の進捗に伴い、将来必要があれば変更され得るものである。 一方、シックハウス症候群と呼ばれる病態で苦しんでいる方の中には、空気中の微量の物質に過敏に反応してしまうことがあると報告されているように、この指針値を満たしている室内空気質であれば絶対に安全であるとは言えない場合もある。しかし、指針値を定め、普及啓発することで、住宅や建物の環境改善が進めば、多くの人たちが新たに健康悪化をきたさないようにすることができるはずである。 従って、指針値を満足するような建材等の使用、住宅や建物の提供もしくはそのような住まい方を期待するところである。一方、指針値設定はその物質が「いかなる条件においても人に有害な影響を与える」ことを意味するのではない、という点について、一般消費者をはじめ、関係業界、建物の管理者等の当時者には、正しく理解していただきたい。』 <参考2> 「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会 中間報告書―第23回までのまとめ 平成31年1月17日」では、キシレン、フタル酸ジ‐n‐ブチル、フタル酸ジ‐2‐エチルへキシルの3物質について指針値が改定され、2-エチル-1-ヘキサノール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレートの3物質の指針値の再検討及びエチルベンゼンの指針値改定案の再検討が示された。 なお、本まとめの中で以下の留意点が示されたので抜粋する。 『指針値を設定することはその物質が指針値を超えた場合に必ずしもヒトに有害な影響を与えることを意味するのではないので、一般消費者をはじめ、関係業界、建物の管理者等におかれては、その旨を留意されたい。』 厚生労働省HP (https://www.mhlw.go.jp/content/000470188.pdf) <参考3> 現在の新築住宅における室内空気中化学物質の実態が十分に把握されていない状況であったことから、当財団において、住宅相談業務の基礎資料として活用するため、平成29年度及び平成30年度の2か年にわたり、「室内空気中の健康に影響を及ぼす可能性のある物質に関するデータの収集・分析事業」を実施した。当該報告概要が2019年4月より下記HPにより公表されているため、紹介する。 本報告概要では、対象とした平成29年度の冬季に竣工した未入居の新築住宅100戸と平成30年度の夏季に竣工した未入居の新築住宅100戸の室内空気中化学物質の測定結果等が確認できる。 (公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターHP |
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①ホルムアルデヒド | (*29) ppmというのは化学物質の量を体積として示した単位で、空気の体積1000Lに対して100万分のいくつに当るかを示したものである。たとえば、ホルムアルデヒド0.01ppmとは、空気1000Lに対して0.01mLとなる。一方、μg/㎥は空気の体積1㎥あたりの化学物質の量を重量で示したものである。気体の体積は、温度が高くなると増加するため学術的にはmg/㎥やμg/㎥という単位が用いられる。ホルムアルデヒドの場合、空気室温25℃で換算すると0.1mg/㎥は約0.08ppmとなる。
(*30) CAS番号:アメリカ化学会の機関であるCASが個々の化学物質もしくは化学物質群に付与している登録番号 (*31) 空気(主に窒素、酸素等の混合物である)と比較したときに、同体積の気体がどれだけ重いかの指標になる。この値が大きいほど空気に比べて重くなる。 (*32) (International Agency-for-Research on Cancer)はWHOに所属する国際的ながんの研究機関で、物質の発がん性について以下のグループ分けを行っている。 グループ1:ヒトに対して発がん性を示す グループ2A:ヒトに対しておそらく発がん性を示す グループ2B:ヒトに対して発がん性を示す可能性がある グループ3:ヒトに対する発がん性について分類できない グループ4:ヒトに対しておそらく発がん性を示さない |
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室内濃度指針値 | 100μg/m3(0.08ppm)(*29) 設定日:1997.6.13 |
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別称(参考23) | ・オキシメチレン ・オキソメタン ・ホルマリン ・メタナール ・メチルアルデヒド ・メチレンオキサイド |
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CAS番号(*30) | 50-00-0 | |
一般的な性質 | 無色で刺激臭を有し、常温ではガス体である。水によく溶け、35~37%の水溶液はホルマリンとして知られている。分子量は30.03であり、常温での蒸気密度(*31)は約1.07である。これは、空気と比較してほぼ同じ重さである。 | |
主な用途と推定される発生源 | 合板、パーティクルボード、壁紙用接着剤等に用いられる尿素(ユリア)系、メラミン系、フェノール系等の合成樹脂や接着剤の原料となるほか、一部ののり等の防腐剤や繊維の縮み防止加工剤等、さまざまな用途の材料として用いられている。 室内空気汚染の主な原因として推定されるのは、合板や内装材等の接着剤として使用されているユリア系、メラミン系、フェノール系等の接着剤からの放散(未反応物もしくは分解物)である。建材だけでなく、これらを使用した家具類も同様である(木製家具、壁紙、カーペット等)。また、喫煙や石油やガスを用いた暖房器具の使用によっても発生する可能性がある。 |
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健康影響 | 短期暴露では0.08ppmあたりに臭いの検知閾値があるとされ、これが最も低い濃度での影響である。0.4ppmあたりに目の刺激閾値、0.5ppmあたりに喉の炎症閾値があるとされ、3ppmでは目や鼻に刺激が起こり、4~5ppmでは流涙し呼吸器に不快感が生じる。31ppmあたりで重篤な症状が起こり、104ppmあたりでは死亡する。IARC(*32)で「ヒトに対して発がん性を示す(グループ1)(参考23)」と分類されている。 | |
②アセトアルデヒド | (*33) アセトアルデヒドについては、厚生労働省が定めた指針値はWHOの指針と算定方法は異なっている。 |
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室内濃度指針値 | 48μg/m3(0.03ppm)(*33) 設定日:2002.1.22 |
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別称 | ・エタナ―ル ・エチルアルデヒド ・酢酸アルデヒド |
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CAS番号 | 75-07-0 | |
一般的な性質 | 純品は無色の液体で刺激臭があり、薄い溶液では果実様の芳香がある。その臭気の閾値は90μg/m3との報告がある。分子量は44.1で、常温における蒸気密度は約1.5、蒸気圧は98.6kPaであり、揮発性は高い。空気より重いが、対流等により拡散した空気との混合気体は相対的に空気と同じ密度になる。 | |
主な用途と推定される発生源 | エタノールの酸化により生成され、ヒト及び高等植物における中間代謝物でもあるため、様々な食物やアルコールを含むもの、またヒトそのものも発生源になり得る。また、喫煙により発生することも知られている。ホルムアルデヒド同様一部の接着剤や防腐剤に使用されている他、写真現像用の薬品としても使用される。 | |
健康影響 | いわゆる二日酔いの原因物質の一つとして知られる。蒸気は目、鼻、のどに刺激がある。目に侵入すると結膜炎や目のかすみを起こす。長期間の直接接触により発赤、皮膚炎を起こすことがある。高濃度蒸気の吸入による中毒症状として、麻酔作用、意識混濁、気管支炎、肺浮腫等があり、初期症状は慢性アルコール中毒に似ている。IARC(*32)で「ヒトに対して発がん性を示す可能性がある(2B)(参考23)」と分類されている。 | |
③トルエン | (*34) 一般的に化学物質の揮散のしやすさは、沸点と蒸気圧を指標に判断されるが、建材等からの物質の揮散は蒸発によるものであるので、この値を指標とする方が適していると考えられる。一般的には値が大きいほど揮散しやすいとみなされる。 (*35) 一般的に、労働者が当該物質に暴露された場合に、空気中の濃度がこれ以下であれば健康影響が見られないとされる濃度で、通常1日8時間、週40時間程度の労働時間中に、肉体的に激しくない労働に従事する場合を想定して定められている。但し、感受性は個々人によって異なるので、この値以下でも、不快、既存の健康影響の悪化、あるいは職業病の発生を防止できない場合があると勧告されている。 |
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室内濃度指針値 | 260μg/m3(0.07ppm) 設定日:2000.6.26 |
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別称 | ・トルオールン ・フェニルメタン ・メチルベンゼン |
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CAS番号 | 108-88-3 | |
一般的な性質 | トルエンは無色でベンゼン様の芳香を持つ、常温では可燃性の液体。分子量は92.13で、常温での蒸気圧(*34)は約2.9kPa、蒸気密度は約3.1である。従って揮発性は高いが、空気より重く、高濃度の蒸気は低部に滞留する性質があると考えられる。しかしながら、通常は対流によって拡散し、空気との混合気体は相対的に空気と同じ密度になると思われる。 | |
主な用途と推定される発生源 | 接着剤や塗料の溶剤及び希釈剤等として、通常は他の溶剤と混合して用いられる。アンチノッキング剤として、ガソリン中に添加されることがある。 室内空気汚染の主な原因として推定されるのは、内装材等の施工用接着剤、塗料等からの放散である。建材だけでなく、これらを使用した家具類も同様である。 |
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健康影響 | 労働環境における許容濃度(*35)として100ppmが勧告されている。480ppbあたりに臭いの検知閾値があるとされる。高濃度の短期暴露で目や気道に刺激があり、精神錯乱、疲労、吐き気等、中枢神経系に影響を与えることがある。また意識低下や不整脈を起こすことがある。生物学的半減期は約6時間前後と推定されている。また、比較的高濃度の長期暴露により、頭痛、疲労、脱力感等の神経症状へ影響を与えることがあり、心臓に影響を与え不整脈を起こすことがある。 IARC(*32)で「ヒトに対する発がん性について分類できない(3)(参考23)」とされている。 |
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④キシレン | ||
室内濃度指針値 |
200μg/㎥(0.05ppm) 設定日:2000.1.17 改定日:2019.1.17 |
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別称 | ・キシレン混合体 ・ジメチルベンゼン ・メチルトルエン ・m-キシレン及びp-キシレン |
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CAS番号 | 1330-20-7 | |
一般的な性質 | 無色でベンゼン様の芳香を持つ。市販品はo-,m-,p-の混合物である。常温では可燃性の液体。分子量は106.16で、常温での蒸気圧は約1.3kPa(0.8~2.2kPaの混合)、蒸気密度は約3.7である。従って揮発性は高いが、空気より重く、高濃度の蒸気は低部に滞留する性質があると考えられる。しかしながら、通常は対流により拡散し、空気との混合気体は相対的に空気と同じ密度になると思われる。 | |
主な用途と推定される発生源 | 接着剤や塗料の溶剤及び希釈剤等として、通常は他の溶剤と混合して用いられる。キシレンの市販品は通常エチルベンゼンも含んでいる。トルエンと同様、ガソリンのアンチノッキング剤として添加されることがある。 室内空気汚染の主な原因として推定されるのは、内装材等の施工用接着剤、塗料等からの放散である。建材だけでなく、これらを使用した家具類も同様である。 |
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健康影響 | トルエンと同様、労働環境における許容濃度として100ppmが勧告されている。また高濃度の短期暴露の影響はトルエンと類似している。蒸気はのどや目を刺激し、頭痛、疲労、精神錯乱を起こすことがあるという。200ppm程度の濃度で明らかに目、鼻、喉が刺激され、労働者の中に作業反応時間の延長するものが出るといわれている。生物学的半減期は4~7時間と推定されている。 また、比較的高濃度の長期暴露により頭痛、不眠症、興奮等の神経症状へ影響を与えることがあるといわれている。 IARC(*32)で「ヒトに対する発がん性について分類できない(グループ3)(参考23)」とされている。 |
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⑤エチルベンゼン | ||
室内濃度指針値 | 3800μg/m3(0.88ppm) 設定日:2000.12.15 |
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別称 | ・エチルベンゾール ・フェニルエタン | |
CAS番号 | 100-41-4 | |
一般的な性質 | 無色で特有の芳香を持つ、常温では可燃性の液体。分子量は106.16で、常温での蒸気圧は約0.9kPa、蒸気密度は約3.7である。従って揮発性は高いが、空気より重く、低部に滞留する性質があると考えられる。しかしながら、通常は対流により拡散し、空気との混合気体は相対的に空気と同じ密度になると思われる。 | |
主な用途と推定される発生源 | 接着剤や塗料の溶剤及び希釈剤等として、また燃料油に混和して、通常は他の溶剤と混合して用いられる。キシレンの市販品は通常エチルベンゼンも含んでいる。 室内空気汚染の主な原因として推定されるのは、合板や内装材等の接着剤、塗料等からの放散である。建材だけでなく、これらを使用した家具類も同様である。 |
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健康影響 | 臭い自体は10ppm以下でも感知できるといわれている。短期暴露では、蒸気がのどや目に刺激がある。数千ppmといったかなりの高濃度になると、目眩や意識低下等の中枢神経系に影響がある。また、長期間皮膚に接触すると皮膚炎を起こすことがある。発がん性や生殖毒性が指摘されている。(参考24) IARC(*32)で「ヒトに対して発がん性を示す可能性がある(グループ2B)(参考23)」と分類されている。 |
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⑥スチレン | (*36) ABSは、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンの頭文字で、これらの3物質の「共重合体」と呼ばれる樹脂である。熱可塑性(熱を加えると柔らかくなって、変形後もその形を保持する性質を持つ)樹脂に分類される。長期間使用でき、衝撃に強い、成形しやすい等の特徴があるため、自動車、家電製品、プリンターやパソコン等の機器、外装材や建材、玩具などに広く用いられている。 (*37) 構造中に鎖が連なるように、多数の繰り返しの単位を含む高分子量化合物のことをポリマーといい、その製品はプラスチック、合成繊維などと呼ばれている。これに対しモノマー(単量体)とは、ポリマーを合成する際の原料となる低分子化合物のことをいう。ポリマーは化合物同士が固く結びあっており、安定した状態ということができるが、モノマーは他の化合物のモノマーと反応する性質があるため、不安定な状態であり、これが室内へ放散する原因となる。
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室内濃度指針値 | 220μg/m3(0.05ppm) 設定日:2000.12.15 |
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別称 | ・エテニルベンゼン ・スチレン(モノマー) ・スチロール ・ビニルベンゼン ・フェニルエチレン |
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CAS番号 | 100-42-5 | |
一般的な性質 | 無色ないし黄色を帯びた特徴的な臭気のある、常温では油状の液体。分子量は104.14であり、常温での蒸気圧は約0.7kPa、蒸気密度は約3.6である。従って揮発性は高いが、空気より重く、高濃度の蒸気は低部に滞留する性質があると考えられる。 しかしながら、通常は対流により拡散し、空気との混合気体は相対的に空気と同じ密度になると思われる。 |
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主な用途と推定される発生源 | ポリスチレン樹脂、合成ゴム、不飽和ポリエステル樹脂、ABS樹脂(*36)、イオン交換樹脂、合成樹脂塗料等に含まれる高分子化合物の原料として用いられている。これらの樹脂を使用しているもの(断熱材、浴室ユニット、畳心材、人工大理石、化粧合板等の他様々な家具、包装材等)に未反応のモノマー(*37)が残留していた場合には、室内空気中に揮散する可能性がある。 | |
健康影響 | 労働環境における許容濃度として20ppmが勧告されている。60ppm程度で臭気を感じはじめ、200ppmを超えると強く不快な臭いに感じるという。600ppm程度で目や鼻に刺激、800ppm程度になると目や喉に強い刺激を感じ、眠気や脱力感を感じるようになる。 比較的高濃度の長期暴露により、肺や中枢神経系に影響を与え、眠気や目眩を生じることがある。ヒトにおける遺伝子傷害性を示唆する証拠は得られていない。発がん性のおそれがあるとの指摘がある。(参考25) IARC(*32)で「ヒトに対して発がん性を示す可能性がある(グループ2B)(参考23)」と分類されている。 |
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⑦パラジクロロベンゼン | ||
室内濃度指針値 | 240μg/m3(0.04ppm) 設定日:2000.6.26 |
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別称 | ・1,4-ジクロロベンゼン ・p-ジクロロベンゼン | |
CAS番号 | 106-46-7 | |
一般的な性質 | 無色又は白色の結晶で特有の刺激臭を有し、常温で昇華する。分子量は147.01で、常温での蒸気圧は約0.17kPa、蒸気密度は約5.1であり、空気より重く、蒸気は低部に滞留する性質があると考えられる。しかしながら、通常は対流により拡散し、空気との混合気体は相対的に空気と同じ密度になると思われる。 | |
主な用途と推定される発生源 | 家庭内では衣類の防虫剤やトイレの芳香剤等として使用されている。 | |
健康影響 | 15~30ppmで臭気を感じ、80~160ppmでは大部分のヒトが目や鼻に痛みを感じる。このように高濃度の短期暴露で目、皮膚、気道が刺激される。また、肝臓及び腎臓に影響を与え、機能低下及び損傷を生じることがある。 また、比較的高濃度の長期暴露により、肝臓、腎臓、肺、メトヘモグロビン形成に影響を与えることがある。平成8年11月にマウスに対するがん原生があるという結果が報告されたが、「種特異的な高感受性の結果によるものであり、人へのリスク評価に反映させることは困難である」とされている。 IARC(*32)で「ヒトに対して発がん性を示す可能性がある(グループ2B)(参考23)」と分類されている。 |
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⑧テトラデカン | ||
室内濃度指針値 | 330μg/m3(0.04ppm) 設定日:2001.7.5 |
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別称 | ・n-テトラデカン | |
CAS番号 | 629-59-4 | |
一般的な性質 | 石油臭のある、常温では基本的に無色透明な液体である。凝固点が6℃弱であるため、冬季には固化する可能性がある。分子量は198.39であり、常温における蒸気密度は約6.8、蒸気圧は約0.18kPaである。従って揮発性は他の溶剤に比べると低い。蒸気は空気より重く、高密度の場合は低部に滞留する性質があると考えられる。しかしながら、対流等により拡散した空気との混合気体は相対的に空気と同じ密度になる。 | |
主な用途と推定される発生源 | 工業的に灯油留分をさらに精製して生産されている。従って灯油は主要な発生源になり得る。また、塗料等の溶剤に使用されることがある。 | |
健康影響 | 中毒の情報はあまりないが、高濃度では刺激性で麻酔作用があるとされる。皮膚に直接ついた場合、皮膚の乾燥、角化、亀裂を生じることがある。衣服についてそれが長時間皮膚に接触したような場合には接触性皮膚炎を起こすことがある。 | |
⑨クロルピリホス | ||
室内濃度指針値 | 1μg/m3(0.07ppb)小児の場合は0.1μg/m3(0.007ppb) 設定日:2000.12.15 |
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別称 | ・チオリン酸O.O‐ジエチル-O-(3,5,6-トリクロロ-2-ピリジル) ・モノチオリン酸O.O‐ジエチル-O-(3,5,6-トリクロロ-2-ピリジル) ・O,O´‐ジエチル-O-(3,5,6-トリクロロ-2-ピリジル)ホスホロチオエート ・O,O‐ジエチル-O-(3,5,6-トリクロロ-2-ピリジル)チオホスファート:チオリン酸O.O‐ジエチル-O-(3,5,6-トリクロロ-2-ピリジル) |
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CAS番号 | 2921-88-2 | |
一般的な性質 | 純品は無色の結晶。分子量は350.6で、常温における蒸気密度は約12、蒸気圧は約2.5×10-6kPaである。前出の化合物と比べると揮発性はかなり低く、空気より重い。残効性がある有機リン系の殺虫剤である。 | |
主な用途と推定される発生源 | 家庭内では防蟻剤として使用されていた。 (建築基準法の改正により、建築材料に添加しないことが規定され、平成15年7月1日に施行された) |
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健康影響 | 有機リン系の殺虫剤であり、アセチルコリンエステラーゼを阻害する。軽症の中毒時の症状として、倦怠感、違和感、頭痛、めまい、胸部圧迫感、不安感および軽度の運動失調等の非特異的症状、吐き気、嘔吐、唾液分泌過多、多量の発汗、下痢、腹痛、軽い縮瞳があるとされる。重症の急性中毒の場合、縮瞳、意識混濁、けいれん等の神経障害を起こすとされている。 | |
⑩フェノブカルブ | ||
室内濃度指針値 | 33μg/m3(3.8ppb) 設定日:2002.1.22 |
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別称 | ・BPMC ・N-メチルカルバミン酸2-sec-ブチルフェニル ・2-(1-メチルプロピル)-フェニル-N-メチルカルバマート ・N-メチルカルバミン酸-2-ブチルフェニル ・N-メチルカルバミン酸-2-sec-ブチルフェニル |
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CAS番号 | 3766-81-2 | |
一般的な性質 | 純品は無色の結晶でわずかな芳香臭がある。分子量は207.3で、常温における蒸気密度は約7.1、蒸気圧は1.6Paであり、揮発性は低い。蒸気は空気より重く、低部に滞留する性質があると考えられるが、対流等により拡散した空気との混合気体は相対的に空気と同じ密度になる。 | |
主な用途と推定される発生源 | 水稲、野菜などの害虫駆除に用いられるが、家庭内では防蟻剤として用いられている。防蟻剤用として特化した製品は、高濃度で揮発しないようマイクロカプセル化されており、土壌に適切に処理された場合、室内への放散は低いものと思われる。 | |
健康影響 | カーバメート系の殺虫剤であり、有機リン系と同様にアセチルコリンエステラーゼを阻害する。ただし、作用機序は異なっており、非可逆的抑制剤である有機リン系と異なりコリンエステラーゼの阻害作用は可逆的である。 高濃度蒸気や粉塵の吸入による中毒症状として、倦怠感、頭痛、めまい、悪心、嘔吐、腹痛などを起こし、重症の場合は縮瞳、意識混濁等を起こす。皮膚に付着すると、紅斑、浮腫を起こすことがある。 |
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⑪ダイアジノン | ||
室内濃度指針値 | 0.29μg/m3(0.02ppb) 設定日:2001.7.5 |
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別称 | ・チオリン酸O,O-ジエチル-O-(2-イソプロピル-6-メチル-4-ピリミジニル) ・モノチオリン酸O,O-ジエチル-O-(2-イソプロピル-4-メチル-6-ピリミジニル) ・2-イソプロピル-4-メチルピリミジル-6-ジエチルチオホスファート(別名ダイアジノン);チオリン酸O,O-ジエチル-O-(2-イソプロピル-6-メチル-4-ピリミジニル) ・O,O-ジエチル-O-(2-イソプロピル-4-メチル-6-ピリミジニル)ホスホロチオエート ・O-(2-イソプロピル-4-メチルピリミジル)-6-ジエチルチオホスファート;チオリン酸O,O-ジエチル-O-(2-イソプロピル-6-メチル-4-ピリミジニル)(別名ダイアジノン) |
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CAS番号 | 333-41-5 | |
一般的な性質 | 純品では弱いエステル臭を持つ、無色の常温ではやや粘ちょう性の液体である。分子量は304.35であり、常温における蒸気密度は約10.5、蒸気圧は約1.2×10-6kPaである。従って揮発性は低い。蒸気は空気より重く、高濃度では低部に滞留する性質があると考えられる。しかしながら、対流等により拡散した空気との混合気体は相対的に空気と同じ密度になる。 | |
主な用途と推定される発生源 | 主に殺虫剤の有効成分として用いられる。 | |
健康影響 | 有機リン系の殺虫剤であり、アセチルコリンエステラーゼを阻害する。具体的な中毒症状についてはクロルピリホスの項と同様である。 IARC(*32)で「ヒトに対しておそらく発がん性を示す(グループ2A)(参考23)」と分類されている。 |
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⑫フタル酸ジ-n-ブチル | ||
室内濃度指針値 |
17μg/㎥(1.5ppb) 設定日:2000.12.15 改訂日:2019.1.17 |
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別称 | ・ジブタン-1-イル=フタラート ・ジブチル-o-フタラート ・フタル酸ブチル ・ベンゼン-1,2-ジカルボン酸ジブチル ・ベンゼン1,2ジカルボン酸ジブチル ・1,2-ベンゼンジカルボン酸ジブチルエステル ・DBP ・n-ブチルフタラート |
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CAS番号 | 84-74-2 | |
一般的な性質 | 無色~微黄色の特徴的な臭気がある、常温では粘ちょう性の液体である。分子量は278.3であり、常温における蒸気密度は約9.6、蒸気圧は0.01kPa未満である。従って揮発性は高くないが、空気より重く、高濃度の蒸気は低部に滞留する性質があると考えられる。しかしながら、対流等により拡散した空気との混合気体は相対的に空気と同じ密度になる。 | |
主な用途と推定される発生源 | 主に塗料、顔料や接着剤に、加工性や可塑化効率の向上のために使用されている。 | |
健康影響 | 高濃度の短期暴露で、目、皮膚、気道に刺激を与えることがある。誤飲により吐き気、目眩、目の痛み、流涙、結膜炎が見られたという報告がある。長期暴露の影響ははっきりしていない。 | |
⑬フタル酸ジ-2-エチルヘキシル | (*38) ポリ塩化ビニル等の材料に柔軟性を与えたり、加工をしやすくするために添加する物質である。その主成分は酸とアルコールから合成されるエステル化合物で、その代表的なものがフタル酸を使ったエステル化合物である。 |
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室内濃度指針値 |
100μg/㎥(6.3ppb) 設定日2001.7.5 改訂日:2019.1.17 |
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別称 | ・ビス(2-エチルヘキサン-1-イル)=フタラート ・ジ-2-エチルヘキシル=フタラート ・フタル酸ジオクチル ・フタル酸ジオクチル(Dop) ・フタル酸ビス(2-エチルヘキシル) ・ベンゼン1,2ジカルボン酸ジオクチル ・DEHP ・DOP |
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CAS番号 | 117-81-7 | |
一般的な性質 | 無色~淡色の特徴的な臭気がある、常温では粘ちょう性の液体である。分子量は390.5であり、常温における蒸気密度は約13.45、蒸気圧は約0.001kPaである。従って常温ではほとんど揮発しない。上記にあるように蒸気密度は空気よりかなり重いが、通常は低濃度で拡散した空気との混合気体になっており、相対的に空気と同じ密度になる。 | |
主な用途と推定される発生源 | 代表的な可塑剤(*38)として、壁紙、床材、各種フィルム、電線被覆等様々な形で汎用されている。 | |
健康影響 | 工場等における事故的な高濃度の短期暴露で、目、皮膚、気道に刺激を与えることがある。消化管に影響を与えることがある。反復または長期間の接触により皮膚炎を起こすことがある。 IARC(*32)で「ヒトに対して発がん性を示す可能性がある(グループ2B)(参考23)」と分類されている。 |
ホルムアルデヒドを発散するおそれのある建材で内装仕上げへの使用が制限される建材について、建築基準法令(告示)において17品目の建材が定められており、これらの建材は告示対象建材と呼ばれている。各建材は、ホルムアルデヒドの発散速度によってF☆☆☆☆、F☆☆☆などの4等級に区分され、その等級はJISやJASによる等級表示や国土交通大臣の認定書により確認できる。
告示対象建材を組み合わせた複合建材については、JIS、JAS、国土交通大臣認定に基づき、事業者団体等の表示制度を用いてホルムアルデヒドに関する発散区分の表示を行っているものもある。
告示対象建材以外の建材(告示対象外建材)は、ホルムアルデヒドの発散がほとんど認められないことから、面積の制限を受けることなく、居室の内装材として使用することができる。また、告示対象外建材であっても、事業者団体等の表示制度を用いてホルムアルデヒドに関する発散区分の表示を行なっているものもある。
ホルムアルデヒドに関しては建築基準法により、建材の使用制限と機械換気設備の設置という形で明確に規制され、また建材の規格についても日本産業規格(JIS)や日本農林規格(JAS)で定められているが、それ以外のVOC(トルエン・キシレン等)については、法令による規制や建材に関する規格等が定められていない。
しかし、シックハウス対策としては、これらVOCに対する配慮も必要であるため、ここでは、現時点で明らかになっている、建材を選択する際のVOCに対する配慮事項として挙げられている内容を示す。