１．水平振動とは

２．発生原因

（１）

適切な設計・施工でも通常起こり得る軽微な水平振動
適切な設計・施工が行われていても、使用上支障のない軽微な水平振動が発生することがある。

（２）

不適切な構造躯体等の設計
構造躯体の設計段階において、以下の事項に不適切な点がある場合には、水平振動が発生することがある。

①

柱・大梁・小梁・壁のコンクリート及び鉄筋の規格

②

柱・大梁・小梁・壁の断面寸法等

③

柱・大梁・小梁・壁の配筋方法

④

水平構面の剛性

⑤

建物のアスペクト比

（３）

不適切な構造躯体の施工等
躯体工事の段階において、以下の事項に不適切な点がある場合には、水平振動が発生することがある。
（材料）

①

柱・大梁・小梁・壁のコンクリート及び鉄筋の品質

（施工）

②

柱・大梁・小梁・壁の断面寸法等

③

柱・大梁・小梁・壁の配筋方法

④

コンクリートの打込み・締固め

⑤

コンクリートの養生（型枠・支保工）

⑥

工事中の一時的な過荷重の積載

⑦

水平構面の剛性

• ｢建築物の振動に関する居住性能評価規準・同解説(2018)｣p21（（一社）日本建築学会編集、発行）

• ｢新建築学大系35荷重･外力｣p291振動障害の捉え方(新建築学大系編集委員会編集、㈱彰国社発行)

• 適切に設計・施工された住宅であっても、構造耐力上支障のない軽微な水平振動は発生することがある。
• ヒアリング又は現場調査により、発生している水平振動の程度を確認する。

• 水平振動の評価規準には、日本建築学会の居住性能評価規準（参考４）がある。しかし、精緻な水平振動の評価は、一般的には難しく、日本建築学会の規準通り正確に評価する必要があるため、この段階では、不具合事象の程度を感覚的に捉えるにとどめ、必要に応じて以降の調査を進める。

• ｢建築物の振動に関する居住性能評価規準・同解説 (2018)｣（(一社)日本建築学会　編集・発行）

• 特になし

• 水平荷重に対する剛性を確認するため、構造躯体が適切に設計されているかを確認する。

１．構造躯体等の設計内容の確認

①

柱・大梁・小梁・壁のコンクリート及び鉄筋の規格（ａ.ｂ.ｃ.ｇ.☆1）

②

柱・大梁・小梁・壁の断面寸法等（ｂ.ｄ.ｅ.ｇ.☆1）

③

柱・大梁・小梁・壁の配筋方法（ｂ.ｄ.ｅ.ｆ.☆1）

④

水平構面の剛性（ｂ.ｃ.ｄ.ｅ.ｆ.☆1）

⑤

建物のアスペクト比

（１）調査方法

• 当該住宅の設計図書（設計図、仕様書、構造計算書等）を対象として、上記＜確認のポイント＞に沿って、各部材の仕様、部材の配置、寸法、配筋等が適切であるかについて確認する。なお、適切であるかの検討にあたっては、関係法令告示、建設住宅性能評価関連図書により、また国土交通省大臣官房官庁営繕部監修「公共建築工事標準仕様書」、（一社）日本建築学会「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説」、「建築工事標準仕様書・同解説JASS５鉄筋コンクリート工事」、「鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説」、その他の仕様書、基準等が参考となる。
• ＜確認のポイント＞に沿って確認する主な項目を以下に列記する。

  ①

  柱・大梁・小梁・壁のコンクリート及び鉄筋の規格

  • セメントの種類
  • 骨材の種類
  • 鉄筋の種類、規格
  • コンクリートの種別、設計基準強度及び耐久設計基準強度、単位水量、単位セメント量、水セメント比、混和剤の種類
  • コンクリートのヤング係数、乾燥収縮率および許容ひび割れ幅（設定されている場合）

  ②

  柱・大梁・小梁・壁の断面寸法等

  • 柱の巾、奥行
  • 大梁、小梁の巾、梁せい
  • 壁厚さ
  • 壁の位置及び壁長
  • 各部材のスパン

  ③

  柱・大梁・小梁・壁の配筋方法

  • 鉄筋径
  • 柱、主筋本数
  • 柱、帯筋ピッチ
  • 大梁、小梁の主筋の継手、及び定着長さ
  • 梁開口補強
  • 梁あばら筋ピッチ
  • 壁の縦筋・横筋のピッチ
  • 壁開口補強

  ④

  水平構面の剛性

  • コンクリートスラブの鉄筋配筋(定着長さを含む)

  ⑤

  建物のアスペクト比

（２）注意事項等

• 各部材の断面設計・部材の配置については、必要に応じて構造設計者に確認する。

a.

建基法第37条

b.

建基法令第73条第2項ただし書、第82条第四号、第91条、第97条、

c.

平12建告第1446号｢建築物の基礎、主要構造部等に使用する建築材料～｣

d.

平12建告第1450号｢コンクリートの付着、引張り及びせん断～｣

e.

平12建告第1459号｢建築物の使用に支障が起こらないことを確かめる～｣

f.

平12建告第1463号｢鉄筋の継手～｣

ｇ.

平13国交告第1024号「特殊な許容応力度及び特殊な材料強度を定める件」

☆1.

平13国交告第1347号 評価方法基準 「第5の1 構造の安定に関すること」及び「第5の3　劣化の軽減に関すること」

• 「公共建築工事標準仕様書（建築工事編）令和4年版」（国土交通省大臣官房官庁営繕部監修、（一社）公共建築協会発行）

• 「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説2018」（（一社）日本建築学会編集、発行）

• 「建築工事標準仕様書・同解説　JASS5 鉄筋コンクリート工事(2022)」（（一社）日本建築学会編集、発行）

• 「鉄筋ｺﾝｸﾘｰﾄ造配筋指針・同解説(2021)」（（一社）日本建築学会編集、発行）

• 次のいずれかの事項について適切な設計が行われていない場合は、各部材の耐力が十分得られないことが原因で水平振動が発生している可能性が高い。

  ①

  柱・大梁・小梁・壁のコンクリート及び鉄筋の規格

  ②

  柱・大梁・小梁・壁の断面寸法等

  ③

  柱・大梁・小梁・壁の配筋方法

  ④

  水平構面の剛性

• ｢④水平構面の剛性｣について、適切な設計が行われていない場合は、水平構面が柔らかく、一部の構造躯体に外力が集中することが原因で水平振動が発生している可能性が高い。

• 特になし

• 水平荷重に対する剛性を確認するため、構造躯体が適切に施工されているかを確認する。

• 次のいずれかの事項について、設計どおりの施工が行われていない場合、又は不適切な施工が行われている場合は、水平力に対して柱や梁の耐力が十分得られないことが原因で水平振動が発生している可能性が高い。

  ①

  柱・大梁・小梁・壁のコンクリート及び鉄筋の品質

  ②

  柱・大梁・小梁・壁の断面寸法等

  ③

  柱・大梁・小梁・壁の配筋方法

  ④

  コンクリートの打込み・締固め

  ⑤

  コンクリートの養生

  ⑥

  工事中の一時的な過荷重の積載

  ⑦

  水平構面の剛性

• ｢⑦水平構面の剛性｣について、設計どおりの施工が行われていない場合、又は不適切な施工が行われている場合は、水平構面が柔らかく、一部の柱や梁に外力が集中することが原因で、水平振動が発生している可能性が高い。

• スケール