補修方法編

その他の騒音 弾力性のあるビニル床シート材への交換 SO-5-301
RC造
工事概要

モルタル又はコンクリート下地の共用廊下、共用階段に張られた遮音性能の低い床材を撤去し、弾力性のあるビニル床シート材に交換する。


廊下先端側

廊下壁際側

ビニル床シートの施工例(chord作成)
対応する不具合と原因 不具合
  • その他の騒音(床面からの騒音)(SO-5)
原因
  • 床仕上材の選択不良、品質・規格不適
  • 適切な床仕上材選択への配慮不足 等
適用条件
  • 防水性能が不要なこと。
  • 交換するビニル床シート材及び床仕上げ材用接着剤がそれぞれの規格(ビニル系床材(JIS A 5705:2023)・床仕上げ材用接着剤(JIS A 5536:2015))に規定された試験方法により性能が確かめられたものであること。
工事手順の例
弾力性のあるビニル床シート材を張り付ける補修方法の例を示す。
1.事前調査
当事者へのヒアリングを行うと共に、現場での騒音の発生状況を確認し、原因調査を行う。
原則として共用部において標準床衝撃音発生器を用いて発生させた軽量床衝撃音を対象住戸にて測定を行い、実態を把握する。
2.目標性能を満たした製品の選定
事前調査で得られた結果に応じて、目標性能を設定しそれを満足する製品を選定する。(※1)
3.床シートの施工 床シートの施工方法は各製造所の仕様による。以下に基本的な手順を示す。
既存の遮音性能の低い床材が張られている場合は撤去する。
下地の確認を行う。湿気のない平滑な床であることを確認する。凸凹があればケレンや補修材で補修を行う。
下地の清掃をする。
床シートの割付を行う。シートを多少長めに荒切りし、仮敷きする。
定規等で採寸し、端部をカットする。
耐湿式用の接着剤を下地に塗布し、所定の時間乾燥させる。
シートを張り付ける。
4.シート端部、継目の施工
  • 端部はシーリング材、継目はシーリング又は溶接で施工する
〈シーリングの場合〉
マスキングテープで養生する。
シーリング材を充填する。
ヘラで平滑に仕上げる。
所定の時間以上、養生する。
〈専用溶接棒の場合〉
目地部をVカットする。
専用溶接棒を熱風溶接する。
ナイフで余剰部分をカットする。
5.最終確認
工事全体の仕上がりを確認する。
養生等を撤去の上、片付け、清掃を行う。
原則として共用部において標準床衝撃音発生器を用いて発生させた軽量床衝撃音を対象住戸にて測定を行い、補修措置の性能向上効果の確認を行う。
備考
(※1)
目標性能については、各製造所が情報提供している歩行等による発生音の低減性能値が参考になる。なお、性能値は当該床材を用いた場合の騒音レベルの低減量等が示されていることが望ましい。
  • さらに遮音性能を高めるためには、共用廊下や、共用階段に面している住戸のサッシの交換も考慮することが望ましい。
  • ビニル床シート材は床仕上材であり、防水性能は期待できない。防水性能が必要な場合は、塗膜防水を施工し、その上にビニル床シートを施工する必要がある。

遮音補修における注意点
遮音補修は、許容できる騒音の程度には個人差があることに十分に注意して行う必要がある。少しでも音が聞こえている以上、うるさいと評価される可能性を持っている。
したがって、遮音補修によってある一定の遮音性能を確保すれば万全ということではなく、ユーザーの要求や対象空間の音環境を十分調査する必要があるとともに、補修前に居住者等に十分に説明し、現状に対する騒音の低減の程度を理解してもらうことが重要である。(参考:参考文献2)

施工上の注意点
  • 下地に製造所の定める基準を超えた湿気がある場合は、施工を中止する。
  • 階段は階段用の材料を選定し、施工する。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 音響技術No.130 [p3 表1,p4 3.5③] (一社)日本音響材料協会 (一社)日本音響材料協会
2 部位別・図解 木造住宅の防音リフォームマニュアル [p140 7.3] (財)日本住宅リフォームセンター(現・(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター) (株)彰国社
3 建築技術2016年2月 [p132] (株)建築技術 (株)建築技術
4 ビニル系床材(JIS A 5705:2023)[7 試験] 朝日 弘 (一財)日本規格協会
5 床仕上げ材用接着剤(JIS A 5536:2015)[6 試験] 揖斐 敏夫 (一財)日本規格協会