補修方法編

床の傾斜 溝形鋼による梁の補強 F-1-102
木軸
工事概要

たわみが発生した梁をジャッキアップし、たわみを補正した上で梁の両側に溝型鋼を両側から添えて、ボルトで締め付けて補強する。


概要図(chord作成)
対応する不具合と原因 不具合
  • 床の傾斜(F-1)
  • 床のたわみ(F-2)
  • 床鳴り(F-3)
  • 外壁の傾斜(G-1)
  • 外壁のひび割れ、欠損(G-2)
  • 内壁の傾斜(N-1)
  • 勾配屋根の変形(はがれ、ずれ、浮き)(R-1)
  • 床振動(V-1)
  • 水平振動(V-2)
原因
  • 床組構成部材の断面寸法等の不足、配置・間隔の不良、材料の品質不良
  • 軸組の断面寸法等の不足、材料の品質不良
  • 小屋組材の断面寸法等の不良、配置・支持間隔の不良、品質不良
適用条件
  • 天井懐が狭く、梁下に補強材が設置できない場合にも適用可能な方法である。
  • 両側に溝形鋼を添えるので、外壁面には適用できない方法であり、また、補強する梁に掛かる直交梁があると設置できない場合がある。
  • 補強した梁が天井懐の内部に納まり、美観上の問題が生じないこと。
  • 住宅全体にひずみが発生するおそれのある場合は他の工法による。
工事手順の例
1.事前調査
現場での事前調査により、柱と仕口部分に傷みがないことまたは補修(金物補強も含む)により構造耐力上安全であることを確認する。
2.足場の設置
たわんだ梁の直下の周囲に足場を設置する。
  • 足場で床仕上げを傷つけないよう、シート、コンパネ等による保護、養生を行う。
3.仕上材等の撤去 以下の部位を取り外し、たわんだ梁を露出させる。
たわみの発生した梁の下部周辺の天井の仕上げ、下地材等
油圧ジャッキを据え付ける土台回りの床仕上材、下地材等
たわみの発生した梁の上下階で当該梁に接する建具および建具枠
梁のたわみの影響で傷んだ内壁の仕上材、下地材等
梁のたわみの影響で傷んだ上階床の仕上材、下地材、根太等
4.仮柱と油圧ジャッキの設置
仮柱を設置する位置の土台または下階の梁の上に手動の油圧ジャッキを設置し、ジャッキ上部と梁の間に仮柱を設置する。
2階の場合は、仮柱を設置する位置に、角材、H形鋼、コンパネ等を用いて、床組に力が伝わるよう適切な支持をとり、ジャッキを設置する。
5.ジャッキアップ
建物の構造体及び仕上面にゆがみが生じないように5mm程度ずつ、上階の床が水平になるまでジャッキアップし、上階の床で水準器を用いて、梁または床が水平になり、たわみが補正されたことを確認する。

ジャッキアップの例(1階の場合)(chord作成)
6.鋼材の設置
梁の両側面に溝形鋼等を添えて、梁を挟み込むようにして補強し、ウェブ部分(溝形鋼側面)と梁の側面とをボルト締めを行う。

鋼材設置の例(1階の場合)(chord作成)
補強部材(溝形鋼等)の梁せいやボルトのピッチ等は、構造計算等により決定する。上階の床荷重は溝形鋼に負担させ、荷重は柱に直接伝達させる。
7.仮柱およびジャッキの撤去
徐々にジャッキを下げ、たわみ又は変形が生じていないことおよび上階の床が水平であることを確認した上で、仮柱およびジャッキを取り外す。

仮柱とジャッキの撤去(1階の場合)(chord作成)
8.上階室内の補修 上階において、撤去した以下の部位を張り替える。
床の下地材、仕上材、根太等
内壁の下地材、仕上材等
建具枠
9.上階建具の取り付け
取り外した建具を取り付け直す。既存の建具にゆがみ等がある場合は調整し、調整の限界を超えるものは交換して取り付ける。
10.下階室内の補修 下階において、撤去した以下の部位を張り替える。
天井の野縁等の下地材、仕上材等
床の下地材、仕上材、根太等
内壁の下地材、仕上材等
建具枠
  • 足場は適宜撤去する。
11.下階建具の取り付け
取り外した建具を取り付け直す。既存の建具にゆがみ等がある場合は調整し、調整の限界を超えるものは交換して取り付ける。
  • 梁の補強により建具等の変更がある場合は、それに応じて新規の建具枠を取り付ける。
12.最終確認
水準器等を用いて、床仕上げ面の水平を確認する。
工事全体の仕上がりを確認する。
足場などを撤去のうえ、片付け・清掃を行う。
備考 施工上の注意点
  • 設備(電気・給排水・ガス)が関係する場合は、別途撤去、再設置工事が発生する。
  • 設備配管(電気・給排水・ガス)が影響を受ける可能性がある場合は、継手部分の確認を行う。
  • 振動に関する不具合に当該補修方法を適用する場合、「5.工事手順の例」におけるジャッキアップ工程は必要ない。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所