補修方法編

外壁の傾斜 耐力壁(面材)の新設 G-1-105
木軸
工事概要

内外装仕上材を撤去し、建入れ直し(柱や梁等の倒れ、出入り、水平度、曲がり等を正規に修正する)をした上で、耐力壁(面材)を新設し、内外装仕上材を復旧する。



補修前の例(chord作成)



補修後の例(chord作成)
対応する不具合と原因 不具合
  • 外壁の傾斜(G-1)
  • 外壁のひび割れ、欠損(G-2)
  • 内壁の傾斜(N-1)
  • 水平振動(V-2)
原因
  • 耐力壁量の不足
適用条件
  • 上部構造の柱と梁または胴差しの位置にずれや割れなどが無く、新設する耐力壁(面材)の耐力を軸組に伝達できることが確認された場合に適用可能な方法である。
  • 新たに耐力壁(面材)を設けられる外壁がある場合に適用可能な方法である。
  • 耐力壁(面材)の端部の柱の柱脚および柱頭の仕口は、建基法告示平12建告第1460号「木造の継手及び仕口の構造方法を定める件」に適合していること。
  • 基礎は、建基法告示平12建告第1347号「建築物の基礎の構造方法及び構造計算の基準を定める件」に適合する鉄筋コンクリート造であること。
工事手順の例
1.事前調査
現場での事前調査により適用条件を満たしていることを確認する。
外壁の傾斜の影響を受け、交換の必要のあるサッシ等の部品、材料を確認し、工事計画を立てる。(壁量の確保)
2.足場の設置および仕上げ等の撤去
外部足場を設置し、シート養生を行う。
以下の部分の仕上材を撤去する。
  • 修正する通りの壁仕上げ(内外共、間柱を露出させる。)
  • 上記壁に接する天井・床・直交する壁仕上げ(それぞれ関わる野縁・根太・間柱を露出させる。)
  • 建具枠・サッシ(修正する壁面に関わる部分。)
3.建入れ直し・耐力壁(面材)新設 軸組に倒れがない場合は、④から行う。
露出した柱間に仮筋かいを打つ。
胴差と土台に屋起し機(建入れ直しを行う道具)を固定し、下げ振りで倒れを見ながら、正規の位置まで建入れ直しを行う。
  • 建入れ直しのとき、根太掛け、際野縁等の下地材が抵抗することがあるので、必要に応じて撤去する。

    建入れ直しの例(chord作成)
仮筋かいを打ち直す。
耐力壁(面材)両端の柱の上下端部を、建基法告示平12建告第1460号に従い選定した補強金物により土台、胴差し等の横架材に緊結する。(引用:参考文献1)
各通りの所定の位置に耐力壁(面材)を張る。(*1)
耐力壁(面材)の張り方は、柱、間柱および土台・はり・けた・その他の横架材に、確実にくぎで留め付ける。(引用:参考文献1)
1階および2階部の上下同位置に耐力壁(面材)を設ける場合は、面材相互間に原則として、6mm以上のあきを設ける。(引用:参考文献1)

大壁耐力壁における構造用面材の張り方(引用:参考文献1)
4.下地材、仕上材の施工
柱の上下端、横架材の端部仕口、継手、耐力壁(面材)を目視にて隙間や浮きがないことを確認し、必要に応じて金物で補強する。
仮筋かいを撤去する。(建入れ直しを行った場合)
以下の順序で復旧する。
外壁下地→床下地→開口部→天井下地または床下地(フローリング共)→外壁仕上げ→壁、天井ボード張り→壁、天井仕上げ→床仕上げ
5.最終確認
外壁の垂直および工事の仕上り等を確認する。
足場などを撤去のうえ、片付け、清掃する。
備考 施工上の注意点
  • 補強金物を使用する場合、面材の下や上から補強金物を使用すると、面材が浮いてしまったり、補強金物が下地材や仕上材のじゃまになるため、施工上の工夫を行う必要がある。
    下図は、大壁造の耐力壁(面材)において、面材の四隅を切り欠いて、山形プレート(VP)を柱と横架材に直接くぎ打ちする施工方法の例である。この場合は、切り欠いた部分によって、隅部のくぎ1本をくぎ打ちできないため、図のように近傍に増し打ちを行っている。(引用:参考文献1)


柱脚部の施工例(引用:参考文献1)

  • 耐力壁の面材を間柱の位置で継ぐ場合はくぎ打ちが2列になり、30 mm幅の間柱ではへりあきが十分確保できないため、45mm幅の間柱を使用することが望ましい。
  • 給排水衛生設備、電気設備は各工程に合わせて撤去、復旧を行う。
  • 築後数年経た建物の建入れ直しは、新築時に比べて仕口の乾燥が進み、さらには下地材・仕上材が抵抗として働くため、できるだけ軸組のみを露出させる必要がある。
  • 振動に関する不具合に当該補修方法を適用する場合、「5.工事手順の例」における建入れ直しの工程は必要ない。
  • 耐力壁の増設をする場合は、応力の集中を避けるために、他の耐力壁と同程度の倍率として、極端に倍率の高いものを用いないことが望ましく、釣り合いよく配するように行う。耐力壁(面材)を新設することによる耐力壁量の偏りが大きい場合は、「耐力壁(筋かい)の新設」(木造(軸組)G-1-102)による方法を採用する。

*1 ここでは、大壁耐力壁における構造用面材の張り方を示している。
真壁造における構造用面材の張り方は、軸組の中心側に貫または受け材を設けこれに構造用面材を張る。


真壁造における構造用面材の張り方(引用:参考文献1)

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 木造住宅工事仕様書 2023年版[p92~106,p111参考図5.3.3、p113参考図5.4.3] (独)住宅金融支援機構 (株)井上書院