補修方法編

床の傾斜 梁と柱の仕口部分を添え柱により補強 F-1-107
木軸
工事概要

端部仕口でずれ下がった横架材をジャッキアップして、下がりを補正した上で、添え柱により支持する。


不具合概要図(chord作成)
対応する不具合と原因 不具合
  • 床の傾斜(F-1)
  • 床のたわみ(F-2)
  • 床鳴り(F-3)
  • 外壁の傾斜(G-1)
  • 外壁のひび割れ・欠損(G-2)
  • 内壁の傾斜(N-1)
  • 勾配屋根の変形(はがれ・ずれ・浮き)(R-1)
  • 床振動(V-1)
  • 水平振動(V-2)
原因
  • 床組構成部材の架構・接合方法の不良
  • 軸組の架構・接合方法の不良
  • 小屋組材の架構・接合方法の不良
適用条件
  • 仕口部分の下に土台または下階の梁があること。(または下階に間仕切りがあること)
  • 添え柱が内壁等の内側に納められる場合や、美観上問題にならない場合に、適用可能な工法である。
工事手順の例
1.事前調査
現場での事前調査により、仕口部分が負担する荷重に対して構造耐力上、安全であることを確認する。
2.足場の設置
補修する梁の直下の周囲に足場を設置する。補強するための柱(以下、補強柱と記す。)の下端を土台または下階の梁に載せるために床を撤去する際、足場の設置位置が障害にならないように注意する。
  • 足場で床仕上げを傷つけないよう、シート、コンパネ等による保護、養生を行う。
3.仕上材等の撤去 以下の部位を取り外し、ずれ下がった梁を露出させる。
ずれ下がった梁の下部周辺の天井の仕上げ、下地材等
ジャッキを据え付ける土台または下階の梁の周囲の床仕上材、下地材等
ずれ下がった梁の上下階でこの梁に接する建具および建具枠
ずれ下がった梁の影響で傷んだ内外壁の仕上材、下地材等
ずれ下がった梁の影響で傷んだ上階床の仕上材、下地材、根太等
4.仮柱と油圧ジャッキの設置
補強柱を新設する位置より1m程度柱を離して土台または下階の梁に手動の油圧ジャッキを設置し、ジャッキ上部と梁の間に仮柱を設置する。
  • 2階の場合は、ジャッキ及び仮柱を設置する位置に、角材、H形鋼、コンパネ等を用いて、床組に力が伝わるよう適切な措置講じる。
  • ジャッキの転倒に充分注意する。
5.ジャッキアップ たわんだ梁を仮受けするために以下の手順でジャッキアップを行う。
仮柱の座屈及びジャッキの転倒防止のために下げ振りなどを用いて鉛直確認をする。
建物の構造体および仕上面にゆがみが生じないように梁の直上階の床面を確認しながら5mm程度ずつ、上階の床が水平になるまで徐々にジャッキアップする。
上階の床で水準器を用いて、梁が水平になり、たわみが補正されたことを確認する。
6.補強柱の設置

補強柱の設置例(chord作成)
以下のような方法で補強柱を緊結する。
土台または下階の梁と修正された梁との間(横架材間)の寸法を正確に計測する。
寸法に合わせて柱を加工する。
  • 補強柱の仕口は、設置後の圧縮等による垂直荷重による沈みを考慮し、加工する。
土台にほぞ穴を彫り、梁のずれ下がりを抑える補強柱(上端部の仕口は欠き込みなし)をほぞ穴に差込ながら端部仕口の柱に沿わせて垂直に立てる。補強柱を、既存柱とボルトで上下3ケ所に接合する。(*1)さらに、補正して梁を直交する梁に羽子板ボルトで接合する。
補強柱と土台、梁は金物で補強をする。
7.仮柱および油圧ジャッキの撤去 以下の手順で仮柱を撤去する。
ずれ下がりや変形がないことを確認しながら、徐々にジャッキをおろし、仮柱およびジャッキを撤去する。
仮柱を取り外しながら上階の床が水平であるかどうか水準器を用いて確認する。
8.下地材・仕上材の補修
撤去した天井、壁および床の下地材、建具枠、仕上材を張り替える。
撤去した建具を取り付ける。既設の建具にゆがみ等がある場合は調整し、調整の限界を超えるものについては交換して取り付ける。
  • 足場は適宜撤去する。
9.最終確認
水準器を用いて、床仕上げ面の水平を確認する。
工事全体の仕上がりを確認する。
足場等を撤去のうえ、片付け・清掃を行う。
備考
(*1):筋かいとの取り合い等も考慮し、柱のほぞの代わりに接合金物を用いて柱を土台に固定する。なお、ドリフトピン等の径が大きいと割裂を起しやすいので、金物を使用する場合は、構造安全性のチェックを行なうこととする。
 例1(引用:参考文献1)
 例2(chord作成)
ほぞの代わりに接合金物(鋼管タイプ)を柱の木口に差し込み、ドリフトピンを挿入して固定する。土台にはあらかじめ接合金物用の穴をあけておき、柱側の接合金物を落としこんでから、ドリフトピンを挿入して固定する。
接合金物を土台にあらかじめ固定しておき、柱脚には接合金物を差し入れるためのスリット開口を設けておく。柱を水平または鉛直方向より、土台に固定された接合金物に差し入れてから、ドリフトピンを挿入して固定する。
施工上の注意点
  • 設備配管(電気・給排水・ガス)が影響を受ける可能性がある場合は接手部分の確認を行う。
  • 振動に関する不具合に当該補修方法を適用する場合、「5.工事手順の例」におけるジャッキアップ工程は必要ない。
  • 横架材と柱が構造上主要な部分となる場合には、その接合部が建基法告示平12建告第1460号「木造の継手及び仕口の構造方法を定める件」に適合していること。
  • 建設住宅性能評価書を交付された住宅で該当する等級が2以上のものでは、補強された接合部は、原則として品確法告示平13第1347号第5の1「構造の安定に関すること」の基準を満たすこと。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 新・木のデザイン図鑑(2009年6月発行)[p217] 飯島敏夫 (株)エクスナレッジ