補修方法編

設備からの騒音、振動 排水ポンプからの音・振動の伝搬を防止する措置 V-3-303
RC造
工事概要

排水ポンプからの振動の遮断を目的として配管を固定する部分や躯体貫通部分に防振材を施す。


水中ポンプ騒音
補修施工例(chord作成)(参考:参考文献3)
防振対策を施している部分を赤色で示す。
対応する不具合と原因 不具合
  • 設備からの騒音、振動(機械設備等からの騒音及び振動)(V−3)
原因
  • 配管類の支持・固定方法の不良
  • ポンプ本体の防振措置不良  等
適用条件
  • 施工スペースが確保されていること。
  • ポンプ本体の故障・不具合でないこと。
工事手順の例
1.事前調査
当事者へのヒアリングを行うと共に、現場での騒音及び振動の発生状況を確認し、原因調査を行う。
原則として機器の運転時の騒音及び配管圧力等の測定を行う。
機器の故障・不具合に起因していないことを確認する。
不具合の状況から交換する必要のある範囲を確認し、工事計画を立てる。
2.目標性能を満たした工法及び製品の選定
事前調査で得られた結果に応じて、適用条件及び目標性能を満たす工法及び製品を選定する。(※1)
3.足場の設置
必要に応じて足場を設置し、養生を行う。
4.防振部材の設置 防振部材の設置方法は各製造所の仕様による。
ポンプ本体下部に防振材を設置する。
ポンプ本体に接続される配管の途中に防振継手を設置する。
配管の吊り部材を防振タイプに変更する。
配管が躯体を貫通する部分に緩衝材を挿入する。
逆流防止用のチャッキ弁を水撃防止タイプ(※2)に変更する。
5.ポンプの運転試験
ポンプを運転し排水漏れ、騒音振動の影響が低減していることを確認する。
6.最終確認
工事全体の仕上がりを確認する。
足場、養生等を撤去の上、片付け、清掃を行う。
原則として補修後の騒音測定等を行い、補修措置の性能向上効果及び影響性の確認を行う。
備考
(※1)
目標性能については、日本建築学会集合住宅の遮音設計基準の室内騒音に関する適用等級が参考になり、当該基準と同等程度の性能が確認される工法によるものとする。なお、性能の計測は公的な試験機関等で行われたものであることが望ましい。
(※2)
チャッキ弁の閉鎖時の音が伝搬する場合があるので、チャッキ弁は閉鎖時の音の小さいタイプを使用する。(引用:参考文献3)
  • 遮音補修は、許容できる騒音の程度には個人差があることに十分に注意して行う必要がある。少しでも音が聞こえている以上、うるさいと評価される可能性を持っている。
    したがって、遮音補修によってある一定の遮音性能を確保すれば万全ということではなく、ユーザーの要求や対象空間の音環境を十分調査する必要があるとともに、補修前に居住者等に十分に説明し、現状に対する騒音の低減の程度を理解してもらうことが重要である。(参考:参考文献2)

施工上の注意点
  • 防振材は、ばねが柔らかいほど低周波数まで防振効果を期待できる。したがって建築設備では低周波数領域の振動が大きい(例えば回転数が低い)設備機器の場合は防振スプリング、中・高周波数の成分が大きい設備機器の場合には防振ゴム等が用いられることが多い。いわゆる防振パッドは高周波数領域しか防振効果が期待できないので、設備機器自体の防振には、対象とする周波数を考慮し、防振パッドを併用したコイルスプリング、防振ゴム等を使い分ける必要がある。(引用:参考文献1)
  • 一般設備機器の場合には、設備機器設置床の振動特性や防振材の特性によって防振効果が20〜30dB程度で頭打ちになる場合が多いので留意する必要がある。(引用:参考文献1)
  • 一部の防振材に荷重が集中すると、適切な固有振動数を得られなくなるため、防振材は極力均等に荷重がかかるように配置する必要がある。(引用:参考文献1)
  • 防振材は、それぞれ各部品に適切な使用条件があり、常用荷重、許容荷重及び使用環境(油脂類・薬品や直射日光、潮風・水、塩水等の接触)に際しては注意が必要である。
  • ポンプを防振支持して、かつ管路にフレキシブル継手を用いる場合には、運転時に静水圧や運転時の圧力変動によってポンプの防振材料にかかる荷重が設定時と異なるので、初期の防振効果が得られなくなることもある。設備機器はこの点を十分考慮して設置する。(引用:参考文献1)
  • 機器を防振する場合、耐震を考慮して耐震ストッパーを取り付けることが多い。この場合ストッパーボルトがわずかでも防振架台に接触しただけでも防振効果は顕著に低下する。一般的には、ストッパーボルトと防振架台との間にはゴムブッシュを挿入する。しかし、多くの場合設置精度が悪いためゴムブッシュは潰れてしまう。その結果、防振効果が極端に低下して問題となることも多い。したがってゴムブッシュが潰れないよう気をつけて機器を設置する。できればゴムブッシュを使わずストッパーボルトと防振架台との間に十分なクリアランスを設ける方法が望ましい。(引用:参考文献1)
  • 配管が躯体を貫通する部分にモルタルが充填されている場合は、モルタルを除去し、ロックウール等の緩衝材を挿入することが必要である。
  • 水槽外に設置されたポンプの防振対策事例を以下に示す。
    水中ポンプと同様に、ポンプ本体下部、配管継手部、配管吊り部材、躯体貫通部に防振措置が必要となる。
          
    水槽外に設置されたポンプの防振対策事例(引用:参考文献1)

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 建築と音のトラブル [p56~59,163図3] (一社)日本建築協会 (株)学芸出版社
2 部位別・図解 木造住宅の防音リフォームマニュアル [p140 7.3] (財)日本住宅リフォームセンター(現・(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター) (株)彰国社
3 設備工事情報シ-ト Ⅳアフタークレーム P:給排水衛生設備 No.3 雨水排水ポンプの振動音対策/固体伝搬音対策 シートNo. Ⅳ-P-3-改2 (一社)日本建設業連合会 (一社)日本建設業連合会HP