補修方法編

降雨による漏水 外部建具の取付け直し W-1-406
S造
工事概要

枠回りを下地から再施工の上、外装材に止水面を設け、外装材を補修する。


ALC薄形パネル外壁の例
(引用:参考文献5)
対応する不具合と原因 不具合
  • 降雨による漏水(W-1)
原因
  • 外部建具取付枠等の設計・品質・施工不良
  • 外部建具等の選択不良、品質・規格不適、設計上の納まり・施工及び建付け調整不良
適用条件
  • 外装仕上げのひび割れ部からの浸水や、雨水によるサッシ受金物の発錆等による変形等に適用可能な工法である。
工事手順の例
1.事前調査
当事者からのヒアリングや現場での原因調査を行う。
2.足場の設置
必要に応じ外部足場を設置する。
3.枠回り不良部分の撤去
枠回りのシーリング材、外装材、下地モルタル等を撤去する。
  • 全て外側から作業できるようにするが、状況により、内側の一部もはがして施工する場合もある。
ALC薄形パネル外壁の場合
4.サッシの取り付け
鉄骨下地とアンカーを溶接し、固定する。
  • 必要に応じて、サッシ枠(サッシと躯体との隙間)にモルタルや断熱材等を充填する。
5.外装下地材・仕上材の復旧
外装材を復旧する。
6.サッシ回りシーリング施工

ALC薄形パネル外壁のサッシ回りシーリング施工の例
(引用:参考文献5)
7.最終確認
降雨時に浸水がないことを確認する。
足場の撤去のうえ、片付け、清掃を行う。
窯業系サイディング外壁の場合 (木製下地を設けた場合を示す)
4’.先張り防水シートの施工 および入隅防水テープの施工
窓台の全幅と両側の柱の高さ100㎜以上に先張り防水シートを張る。(参考:参考文献3)(※1)
柱と窓台の入隅に生じるすき間は、防水テープ等(※2)を張り十分覆う。(参考:参考文献3)
既存と新設の透湿防水シートまたは防水紙との接合部は、十分な止水を行う。
  • 防水テープは張り直しを行った場合や、しわが生じている場合には漏水につながることがあるため新たなテープで張り直す。
09_S補-08_W-1-406_5_YG4’_図上.jpg先張り防水シートの施工例(引用:参考文献1)

09_S補-08_W-1-406_5_YG4’_図下.jpg

注)・図はサイディング張り等で下地板や構造用面材を張らない構法の
   場合を示す。
  ・ラス直張りモルタル塗りの場合は、先張り防水シートを張る前に
   下地板を施工する。


窓台用と柱部用の先張り防水シートを用いた張付け例(引用:参考文献1)
(入隅部に伸張性のある防水テープを張る場合)
5’.サッシ取り付け
サッシ下枠の水平を保ち、先張り防水シートを破損しないように開口部にはめ込む。
サッシ釘打ちフィンにへこみが生じないようていねいに釘打ちまたはビス留めをする。

サッシの取付例(引用:参考文献3)
  • サッシ釘打ちフィンを固定する下地は、壁下地の種類に応じて取り付けた面合わせ材の上から固定する。
  • サッシの重量により、下枠の前倒れや下がりが生じないよう留意する。(参考:参考文献1)
6’.サッシ外周防水テープ張り(参考:参考文献1)
  • 防水テープは、サッシ釘打ちフィンの幅全体に掛かるように、次の①・②の順に張る。
サッシ縦枠と面合わせ材および壁下地にかかるように両面防水テープ張りする。(※3)
サッシ上枠と面合わせ材および壁下地にかかるように両面防水テープ張りする。この際、①のテープの上まで張る。
  • 吹き上げ防止等の処置が必要な場合は、6.備考を参照する。(※4)
  • 樹脂サッシの場合は、6.備考を参照する(※5)。
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防水テープ張りの例
(引用:参考文献1一部加筆)
7’.防水紙張り(参考:参考文献1)
  • 防水紙は、次の①~③の順に張る。防水テープのはく離紙は、粘着力を低下させないよう、防水紙を張る直前にはがすようにする。
窓下の先張り防水シートの内側に挿入して張る。
窓の両側を下から順に横張りする。重なり代は上下90㎜以上、左右150㎜以上となるようにする。(参考:参考文献1)
窓の上を張る。

防水紙張りの例(引用:参考文献1)
8’.外壁仕上げの施工および四周シーリング
外壁の仕上げを施工する。(※6)
建具の四周をシーリングする。(※7)(※8)(※9)
吹付塗装仕上げの場合には、建具の四周にシーリングを施した後に外壁を塗装で仕上げる。
9’.最終確認
降雨時に浸水がないことを確認する。
足場の撤去のうえ、片付け、清掃を行う。
備考 施工上の注意点
    • 下地に面合わせ材を施工する場合は、壁面との納まり寸法等が変わるので事前に納まりを確認する必要がある。
    • 補修工事には、漏水による汚れや劣化の影響範囲の補修が別途必要となる場合がある。

(※1)(一社)日本防水材料協会規格JWMA-A01:202100(先張り防水シート及び鞍掛けシート)が2021年3月に制定された。サッシ開口部窓台に用いる先張り防水シートは、この規格又はこれと同等以上の性能を有するものとする。(参考:参考文献1)

(※2)外壁面、柱、サッシ窓台などが三方向から立体的に交わる部分(三面交点)はピンホールが生じやすく、雨水浸入の原因となりやすい。このような不具合を防止するため、当該部位には、伸張性のある防水テープや三次元に成形された止水部材を使用することが望ましい。(引用:参考文献1)

(※3)両面防水テープの品質基準は、JIS A6112(住宅用両面粘着防水テープ)の規格に準ずるものとする。(参考:参考文献1)

(※4)工事手順例の6’’.サッシ外周防水テープ張りは、下枠が下屋に接近するなどサッシの設置状況により吹き上げ防止等の措置が必要な場合は、下図のようにサッシ下枠にも張ることがある。この場合は、最初に両面防水テープを下枠に張り、続けて工事手順例6’の①②のテープを張る。(参考:参考文献1)

09_S補-08_W-1-406_6_3段落図.jpgサッシ下枠にも防水テープを張る場合の例(引用:参考文献2一部加筆)

「転載の承諾を得られなかった箇所に網掛けをしております。」

(※6)サッシまわりの胴縁及び通気胴縁に、防腐処理された胴縁を使用する場合は、防腐処理に使用している薬剤が透湿防水シートの性能を低下させることがあるため、施工中は胴縁を濡らさないようにし、胴縁の施工後は速やかに外装材を施工するよう留意する。(参考:参考文献1、6)

(※7)外壁仕上げ材と取り合うサッシの四周は、シーリングを施すことが一般的であるが、軒の出が大きく雨がかりになりにくい部分の湿式仕上げの場合は、シーリングを施さないことがある。(参考:参考文献2)

(※8)建具の四周にシーリングを施した場合はサッシ上部の壁内に浸入した雨水を排出するため、必要に応じて排出口(排水路)をサッシ上枠のシーリング部分に設ける。


サッシ上部シーリングの排水路の例 (引用:参考文献4)

(※9)特に樹脂サッシの場合、窓の変色又はひび割れが生じないよう、製造所の指定する樹脂素材に適したシーリング材を使用する。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 木造住宅工事仕様書 2023年版[p209,p248~257(11.1),p255参考図11.1.4-1,
p256参考図11.1.4-2, p257参考図11.1.5-1①②③]
(独)住宅金融支援機構 (株)井上書院
2 まもりすまい保険設計施工基準・同解説(2019年版)(第2版)[p54 参考図9-2一部加筆] 住宅瑕疵担保責任保険法人住宅保証機構(株) 住宅瑕疵担保責任保険法人住宅保証機構(株)
3 サッシまわりの雨水浸入防止対策[p60,64] (社)日本サッシ協会 (社)日本サッシ協会
4 窯業系サイディングと標準施工(第4版)[p31] (一社)日本窯業外装材協会 (一社)日本窯業外装材協会
5 ALC薄形パネル設計施工指針・同解説[参考ALC
薄形設計施工指針 標準納まり図(鉄骨下地)]
ALC協会 ALC協会
6 JIS A6111:2016透湿防水シート[p解5~6(解説7)] 揖斐敏夫 (一財)日本規格協会
7 木造住宅外皮の防水設計・施工指針および防水設計・施工要領(案)[p47,284] (一社)日本建築学会 (一社)日本建築学会
8 (一社)日本防水材料協会規格JWMA-A01:202100先張り防水シート及び鞍掛けシート (一社)日本防水材料協会 アスファルト防水部会 (一社)日本防水材料協会 アスファルト防水部会
9 JIS A6112:2019住宅用両面粘着防水テープ 揖斐敏夫 (一財)日本規格協会