補修方法編

基礎の沈下 土台をジャッキアップのうえ、土台と基礎の間にモルタル充填 K-1-104
木軸
工事概要

土台を含む上部建物の一部をジャッキアップし、水平に調整した上で土台と基礎の間にモルタルを充填する工法である。(参考:参考文献1)


土台外側からみたジャッキアップ状況
(chord作成)


土台断面からみたジャッキアップ状況
(chord作成)
対応する不具合と原因 不具合
  • 基礎の沈下(K-1)
原因
  • 地盤条件の設定過程の不良
  • 地盤条件設定値の不適合
  • 施工方法の選択不良
  • 敷地の安全対策の不備
  • 既存擁壁への対応不備
適用条件
  • 専門家による地盤調査(支持力、沈下量、土質等)により、現況地盤の長期に生ずる力に対する許容応力度を確認し、自重による沈下その他の地盤の変形等を考慮して建築物又は建築物の部分に有害な損傷、変形及び沈下が生じないことが構造計算により確かめられること。
  • ジャッキアップ時に必要な反力が確保できること。
  • 技術的詳細については、専門家に相談すること。
工事手順の例
1.事前調査
現場調査により、適用条件を満たしていることを確認する。
沈下の状況、原因を確認し、施工計画を立て、工期を決定する。
2.床仕上材等の撤去 以下の部材等を撤去し、基礎を必要な分欠き込む。
設備機器等の床下配管等の切り離し。(必要に応じ設備機器等の取外しを行う。)(※1)
内装材、外装材の必要な範囲。(ジャッキアップ等の変形を避けるため、部材撤去後の強度に留意し、必要に応じ補強を行なう。)
建物外周部の壁、及び土台に接する内部の壁における仕上材、下地板等。(基礎に土台を固定するナットの取外し、取付けに必要な範囲。)
給排水・ガス等の設備配管の切断・先止め。
3.ジャッキの設置
沈下している部分の土台のアンカーボルトのナットを取り外す。
爪付きジャッキを反力架台の上に設置する(安定性に配慮すること)。
4.ジャッキアップによる建物のレベル調整
水準器等で建物全体が均等にあがるよう確認しながら、5㎜程度ずつ順番にすべてのジャッキを調整しながらジャッキアップする。
水準器等で水平確認したうえで、基礎天端と土台の間にレベル調整のためのライナープレートを要所に設置する。
ジャッキを少しずつ下げながら土台をおろし本受けする。
水準器等で土台の下端レベルの水平を確認したうえで、ジャッキを取り外す。
5.土台と基礎の定着
基礎天端の両側に、幅10cm程度の木板(貫板)を型枠として、接着剤又は釘で基礎立上がり部分に接着させ、隙間の回りをふさぐ。
基礎と土台の隙間に無収縮モルタルを充填する。
6.アンカーボルトによる土台の緊結
アンカーボルトにナットを取り付け、十分に締め付ける。なお、レベル調整により、アンカーボルトが短くなっている部分がある場合は、高ナットと全ねじボルト等を使用し、アンカーボルトの長さを確保する。
7.仕上材等の復旧 以下の部分を復旧する。
玄関・浴室等の床束、土間コンクリート床仕上げ、犬走り等。
建物外周部の基礎、土台廻りの仕上材等。
給排水・ガス管の配管、接続。
設備機器等の取外しを行った場合、設備機器の再取付け。
8.最終確認
レベルや水盛管等を用いて建物全体の設置高さ、水平を再度確認する。
器材及び資材を撤去・搬出のうえ、片付け・清掃を行う。
備考
  • 補修工事完了後においても、沈下の進行の有無を確認するなど、基礎や地盤の状況に注意する。
  • ジャッキアップに伴い、外壁等にひび割れ等が生じた場合には、併せて補修する必要がある。
(※1)ユニットバスがある場合は、ジャッキアップに伴い、ユニットバスにゆがみが生
    じる可能性があるため注意する。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 建築技術1995年9月号[p110~111] 間瀬哲 (株)建築技術