補修方法編

降雨による漏水 軒先壁止まりの再施工 W-1-514
木軸・木枠
工事概要

軒先と外壁の取合い部分に外壁防水紙捨て張りおよび壁止まり金物を設置し、屋根下ぶき材および捨て谷を再施工して捨て谷を伝う浸入水をといに流すようにしたのち、屋根ふき材、雨押え、外壁防水紙、外壁材の順に復旧する。


03_木補-軸08_W-1-514_2_図上_2021補修前の例(chord作成)

矢印1
03_木補-軸08_W-1-514_2_図下_2021(chord作成)
補修後の例(  を設置)
対応する不具合と原因 不具合
  • 降雨による漏水(W-1)
原因
  • 屋根との取合い不良
適用条件
工事手順の例
1.事前調査
当事者からのヒアリングや現場での事前調査により、不具合の状況を確認する。
2.足場の設置
工事に必要な足場を設置する。
3.立上がり壁側シーリング材と周辺外壁材・防水紙の一部撤去
外壁材および防水紙は再施工する雨押えが施工できる範囲を含み、外壁材および防水紙を適切に納めることができる継目や重ね部等までの範囲を撤去する。
外壁の下地板が腐朽している場合は、当該部の外壁下地板も取替える。
4.屋根ふき材、雨押え・下ぶき材の撤去
屋根ふき材を傷めないよう、丁寧にはがす。
野地板等が腐朽している場合は、当該部の野地板も取替える。
5.外壁防水紙捨て張り・壁止まり金物の設置
軒先から300mm程度以上の範囲のたる木および野地板と外壁下地面との取合い部は、外壁防水紙捨て張りを差し込むためのすき間を設ける。たる木が外壁下地にくぎ留めされている箇所はくぎを抜く。
外壁防水紙をW500mm×H1000mm程度(参考:参考文献1)以上の大きさに切り、軒先と外壁の交点が概ね中心になるように①で設けたすき間に挿入し、軒の高さから上側の外周を外壁下地面に留め付ける。(手順8で、外壁防水紙捨て張りの内側に外壁防水紙Aを差し込むため、手順5では軒の高さから下側の外壁防水紙捨て張りは固定しない。)
たる木を外壁下地に留めるくぎを抜いた箇所は、改めてくぎ留めして外壁下地面に緊結する。
野地板と外壁下地面に密着するように壁止まり金物を固定する。

03_木補-軸08_W-1-514_5_5_図.jpg
外壁防水紙捨て張り・壁止まり金物の設置(引用:参考文献2)
6.屋根下ぶき・立上がり部増し張り(*1)
屋根下ぶき材を張る。
屋根下ぶき立上がりより高い位置まで、屋根下ぶき増し張りの立上がり部を張り上げる。

03_木補-軸08_W-1-514_5_6_図.jpg
屋根下ぶき・立上り部増し張り(引用:参考文献2)
7.捨て谷の設置・屋根ふき
外壁に沿って、瓦ぶきの場合は捨て谷(金属板横ぶき等は捨て板等)を取り付ける。
屋根ふきをする。

03_木補-軸08_W-1-514_5_7_図_2021-2捨て谷の設置・屋根ふき(引用:参考文献2一部加筆)
8.雨押えの設置・外壁防水紙A張り
雨押えを取り付ける。
外壁防水紙捨て張りの内側に差し込むように外壁防水紙Aを張る。
外壁防水紙捨て張りの軒から下側の外周を留め付ける。
03_木補-軸08_W-1-514_5_8_図_2021雨押えの設置・外壁防水紙A張り(引用:参考文献2一部加筆)
9.外壁防水紙B張り
外壁防水紙Bを雨押えおよび外壁防水紙捨て張りにかかるように張る。
03_木補-軸08_W-1-514_5_9_図_2021-2外壁防水紙B張り(引用:参考文献2一部加筆)
10.外壁材張り
既存の外壁仕様に合わせて外壁材を張る。
壁止まり金物で受けた浸入水を受けるように軒どいを取り付ける。
03_木補-軸08_W-1-514_5_10_図_2021-2外壁材張り(引用:参考文献2一部加筆)
11.最終確認
工事全体の仕上がりを確認する。
降雨時に浸水がないことを確認する。
  • 止水を確認するまで仮設は撤去しないことが望ましい。
足場の撤去、片付け・清掃を行う。
備考 施工上の注意点
  • 下ぶき材の立上げ寸法および雨押えの立上げ寸法や納まりは、屋根仕上材、外壁仕上材によって異なるため注意が必要である。
  • 軒先壁止まり部分と窓、庇等他の造作部分が接近している場合は、外壁防水紙捨て張りの施工に注意が必要である。

*1 屋根と外壁の取合い部で、屋根下ぶき増し張りを施工しない方法もある。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 建築工事標準仕様書・同解説 JASS12 屋根工事(2023)[p182 解説図8.2] (一社) 日本建築学会 (一社) 日本建築学会
2 まもりすまい保険設計施工基準・同解説(2019年版)(第2版)[p39 参考図7-7一部加筆] 住宅瑕疵担保責任保険法人住宅保証機構(株) 住宅瑕疵担保責任保険法人住宅保証機構(株)