補修方法編

床の傾斜 たて枠による床梁の補強 F-1-204
木枠
工事概要

傾斜の発生した床梁をジャッキ等で持ち上げて傾斜を補正した上で、たて枠を増設し床梁を補強する。


たて枠による床梁の補強施工例
(chord作成)
対応する不具合と原因 不具合
  • 床の傾斜(F-1)
  • 内・外壁のひび割れ、欠損(G-2)
  • 内壁の傾斜(N-1)
原因
  • 材のめり込み
  • 材重ね部分の沈み込み
  • 断面寸法等の不足、配置・間隔の不良
適用条件
  • 床梁が傾斜した場合に適用する。
  • 増設する壁等の直下に土台又は鉛直力を受ける壁があり、平面計画上は壁を増設しても支障がない場合に限る。
  • 壁と床梁の接合部において、めり込み防止対策が必要となる。
工事手順の例
1.事前調査
現場での事前調査により、床梁の接合部に傷みがないことを確認する。
  • 補修(金物補強も含む)により構造耐力上安全であることを確認する。
2.足場の設置
傾斜した床梁直下の周囲に足場を設置する。この際ジャッキ等で持ち上げるため、足場の設置位置が障害にならないよう注意する。
  • 足場で床仕上げを傷つけないよう、シートおよびコンパネ等による保護・養生を行う。
3.仕上材等の撤去 以下の部分を取り外す。
傾斜した床梁下部の壁仕上材、下張材等
  • 当該床梁下部に天井がある場合は、床梁下部の天井の仕上材、下張材等
傾斜した床梁の上下階で当該床梁に接する建具および建具枠
床梁の影響でゆがみが生じた内装の仕上材、下張材等
床梁の傾斜の影響を受けて傷んだ直上階床の仕上材、下張材等
4.ジャッキアップ
傾斜した床梁下部壁の下枠と上枠にジャッキ等を設置し、建物構造体及び仕上げ面にゆがみが生じないよう床梁直上階の床面を確認しながら5㎜程度ずつ、上階床が水平になるまで徐々にジャッキアップする。
  • 上階の床でレベル計測器を用いて、床梁が水平になり傾斜が補正されたことを確認する。
5.補強たて枠の設置 以下のような方法で設置する。
修正された下枠と上枠との間の寸法を正確に確認する。
寸法に合わせたて枠の加工をする。
加工されたたて枠を既存のたて枠に添えて釘打ちにて緊結する。
  • 設置時の緊結方法は、告示基準および公庫仕様書で定める緊結方法と同等以上とする。
6.ジャッキ等の撤去 以下のような方法にてジャッキ等の撤去を行う。
再度傾斜や変形がないことを確認しながら、徐々にジャッキ等をおろしジャッキ等を撤去する。
ジャッキ等を取り外しながら上階の床が水平であるかどうか水準器等を用いて確認する。
7.仕上材および下張材の補修
撤去した天井および壁等の下張材、仕上材を張り直す。
8.建具の取り付け
たて枠の補強により建具等に変更がある場合は、それに応じて新規の建具枠を取り付ける。既存の建具にゆがみ等がある場合は調整し、調整の限界を超えるものについては交換して取り付ける。
9.最終確認
水準器等を用いて床仕上面の水平を確認する。
工事全体の仕上がりを確認する。
足場などの撤去のうえ、片付け、清掃を行う。
備考 施工上の注意点
  • 補修の対象となる床梁下階の直下に、土台又は鉛直力を受ける壁がない場合は、ここに示す補修方法によらず、床梁が受ける荷重を既存の壁枠組に伝える適切な補修方法を採用する必要がある。
  • 設備(電気・給水・ガス)が絡む場合は、別途設備工事の撤去、再設置工事が必要となる。
  • 設備配管(電気・給水・ガス)が影響を受ける可能性がある場合は継手部分の確認を行う。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 枠組壁工法住宅工事仕様書 2023年版[p98(4.9.11.3)] (独)住宅金融支援機構 (株)井上書院