補修方法編

基礎の沈下 土台をジャッキアップのうえ、基礎天端レベル調整 K-1-105
木軸
工事概要

基礎底盤部は既設のままで、土台から上部躯体を一旦ジャッキアップし、基礎天端のレベル調整を行った後、上部躯体を据付け直す工法である。


土台から上部のジャッキアップ状況例
(chord作成)


土台のジャッキアップ状況例
(chord作成)
対応する不具合と原因 不具合
  • 基礎の沈下(K-1)
原因
  • 地盤条件の設定過程の不良
  • 地盤条件設定値の不適合
  • 施工方法の選択不良
  • 敷地の安全対策の不備
  • 既存擁壁への対応不備
適用条件
  • 専門家による地盤調査(支持力、沈下量、土質等)により、現況地盤の長期に生ずる力に対する許容応力度を確認し、自重による沈下その他の地盤の変形等を考慮して建築物又は建築物の部分に有害な損傷、変形及び沈下が生じないことが構造計算により確かめられること。
  • ジャッキアップ時に必要な反力が確保できること。
  • 技術的詳細については、専門家に相談すること。
  • 建物の周囲に根がらみ鋼材の搬出入に必要とするスペースが確保できること。(※1)
工事手順の例
1.事前調査
現場調査により、適用条件を満たしていることを確認する。
沈下の状況、原因を確認し、施工計画を立て、工期を決定する。
2.仕上材等の撤去 以下の部位を撤去し、土台及び床下地盤を露出させる。
設備機器等の床下配管等の切り離し。(必要に応じ設備機器等の取外しを行う。)(※2)
内装材、外装材の必要な範囲(ジャッキアップ等の変形を避けるため、部材撤去後の強度に留意し、必要に応じ補強を行う。)
建物外周部の壁、及び土台に接する内部の壁における仕上材、下地材等。(基礎に土台を固定するナットの取外し、取付けに必要な範囲)
給排水・ガス等の設備配管の切断・先止め。
3.基礎と土台の切り離し
基礎と土台を緊結しているアンカーボルトのナットを取り外す。またはボルトの切断、定着部基礎の解体等、適切な方法を選択し、基礎と土台を切り離す。
4.予備の爪付ジャッキ等の設置
すべての床下換気口及び火打ち土台部分に爪付ジャッキを設置する。この際、床下地盤面が水平であることを確認し、ジャッキ設置部分の地盤が沈下する可能性がある場合は、地盤の表面をランマ-等で充分締め固め、木製サンドル(50㎝程度の角材)や鉄板(3cm×45cm×45cm程度)等をジャッキの下に敷き、ジャッキ根元を安定させる。
5.鋼材設置のための予備ジャッキアップ
レベルや水盛管等を用いて建物全体が均等に上がるよう確認しながら、5㎜程度づつ順番にすべてのジャッキを調整しながら20cm程度までジャッキアップする。
(chord作成)
鋼材設置のための予備ジャッキアップの例
6.鋼材の設置
建物全体に鋼材(H形鋼等)を基礎天端と土間の間に井桁状に挟み込む。

鋼材の設置(chord作成)
7.予備の爪付ジャッキの取り外し
レベルや水盛管等を用いて水平を確認しながら、建物を鋼材までおろし、爪付ジャッキを取り外す。
8.油圧ジャッキ等の設置
鋼材の中央下部に油圧ジャッキを設置する。この際、床下地盤面が水平であることを確認し、ジャッキ設置部分の地盤が沈下する可能性がある場合は、地盤を充分締め固め、木製サンドルや鉄板(3cm×45cm×45cm程度)等をジャッキの下に敷き、水平を確保する。
9.ジャッキアップ
建物を揚げることによりひずみが生じないように確認しながら、5㎜程度ずつ順番にすべてのジャッキを調整し、20cm程度まで鋼材ごと建物をジャッキアップする。
(chord作成)
天端レベル調整のためのジャッキアップ
10.基礎天端をはつる
コンクリートとレベル調整用モルタルの密着性を向上させるため、基礎天端のコンクリートをはつり、基礎天端表面に付着している破片等を除去する。
11.基礎天端にコンクリート型枠を設置
土台を緊結するすべての基礎天端の両側に、幅10cm程度の木板(貫板)を型枠として、(型枠は基礎の天端より5㎝程度以上高くなるように設置する。)接着剤又は釘で基礎立ち上がり部分に接着させる。
12.モルタル調合
レベル調整用モルタルを現場にて水と練り合わせる。
13.モルタルの打込み
基準点のレベルを基礎天端において計測器で示し、沈下の少ない基礎天端を基準にレベル調整用モルタルを打込む。自然に放置することでレベル調整用モルタルは水平になる。

基礎の天端レベル調整(chord作成)


ジャッキアップ部分の細部(例)(chord作成)
14.型枠外し
レベル調整用モルタルの打込み7日後にモルタル表面が乾燥していることを確認して木板を外す。
15.基礎天端の水平確認
レベルや水盛管等を用いて基礎天端のレベルを計測し、水平であることを確認する。
16.H形鋼及びジャッキの撤去
4~9の手順を逆に進めてH形鋼を抜き取る。
17.土台の設置
建物の土台より上部にひずみが生じないよう5mm程度づつ順番に油圧ジャッキを調節しながら基礎に土台を設置する。
アンカーボルトの位置と土台のボルト穴の位置を確認する。
18.アンカーボルトによる土台の緊結
アンカーボルトにナットを取付け、十分に締め付ける。なお、基礎天端調整により、アンカーボルトが短くなっている部分がある場合は高ナットと全ねじボルト等を使用し、アンカーボルトの長さを確保する。
この際、高ナットの両側に通常のナットを締め、ダブルナットとしてゆるみが生じないようにする。
19.仕上材及び下地材等の復旧 以下の部分を復旧する。
1階床におけるすべての床束、床根太、下地材及び仕上材。(ジャッキアップで変形、傷んだ部分を含む)
建物外周部の壁および土台に接する内部の壁における下地材、仕上材等。
給排水・ガス管の配管、接続。
設備機器等の取外しを行った場合、設備機器の再取り付け。
20.最終確認
レベルや水盛管等を用いて建物全体の設置高さ、水平を再度確認する。
器材及び資材を撤去・搬出のうえ、片付け・清掃を行う。
備考
  • 工事中に仮住まいの確保が必要である。
  • 補修工事完了後においても、沈下の進行の有無を確認するなど、基礎や地盤の状況に注意する。
  • ジャッキアップに伴い、外壁等にひび割れ等が生じた場合には、併せて補修する必要がある。
(※1)短い鋼材を現場でボルト接合し、必要な長さにし、使用することも可能である。
(※2)ユニットバスがある場合は、ジャッキアップに伴い、ユニットバスにゆがみが生
    じる可能性があるため注意する。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所