補修方法編

床の傾斜 片持ちスラブ下面への鉄骨梁増設 F-1-305
RC造
工事概要
  • スラブ等のひび割れをエポキシ樹脂注入により補修した後、片持ちスラブの下面への鉄骨梁を柱や大梁から突出させ、鉄骨梁とスラブ下面の間に無収縮モルタルを充填する。
  • 床のたわみ修正が必要な場合には、セルフレベリング材による床の補修(RC造F-2-305)による。
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伏図

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06_RC補-02_F-1-305_2_図下.jpg概念図(chord作成)
対応する不具合と原因 不具合
  • 床の傾斜(F-1)
  • 床のたわみ(F-2)
  • 床振動(V-1)
原因
  • スラブの配筋方法の不良(配筋位置のずれ等)
  • コンクリートの打込み・締固めの不良、養生の不良
  • 工事中の一時的な過荷重の積載
適用条件
  • 補修工事に伴う荷重の変動を考慮した長期荷重によって既存の全ての架構に生ずる力が長期許容応力度内に収まっており、原則として躯体コンクリートに不良箇所がない場合に適用が可能である。
  • 増設する鉄骨梁の位置は柱および反対側に鉄筋コンクリート造小梁がある場合に適用する。
  • 増設の鉄骨梁は片持ちスラブのたわみが進行しないように付加的な補強の場合に適用できる。
工事手順の例
1.事前調査
現場調査により、適用条件を満たしていることを確認する。
たわみの状況、原因を確認し、施工計画をたて、工期を決定する。
2.内装仕上材等の撤去
当該住戸のたわんだ片持ちスラブの補修範囲の下階住戸の壁、天井仕上材を撤去し、内装部分に対する養生を行う。
3.準備
器材・資材の搬入、仮設電源を準備する。
足場を設置する。
躯体の実測と墨出しをする。
4.ひび割れ補修
片持ちスラブ(梁、柱)にひび割れが見られる場合はエポキシ樹脂注入工法で補修する。(RC造G-2-301 参照)
5.鉄骨梁の設置
鉄骨梁(H形鋼)の設置位置に合わせて、取付け用あと施工アンカーをコンクリートにセットする。なお、無収縮モルタル充填のH形鋼天端とスラブ下端のクリアランスは、施工性や搬入のためのH形鋼の分割による継手の有無等から決定される。
鉄骨片持ち梁を取り付ける。
先端の繋ぎの鉄骨小梁を取付け、高力ボルト締めを行なう。
6.無収縮モルタルの圧入と養生
H形鋼上部とスラブ下端の隙間に無収縮モルタルを圧入して、スラブ荷重をH形鋼に伝達できるようにする。
圧入の後、強度を確認または所定の存置期間を確保する。
 06_RC補-02_F-1-305_5_6_図2020.jpg※上記の他、固練りの無収縮モルタル等を充填する
   場合もある。
  無収縮モルタルの圧入例(chord作成)

7.内装仕上材等の復旧
    床レベルの補正を行い、撤去した補修スラブの床仕上げ、下階の天井仕上げ、壁を復旧する。
8.最終確認
水準器を用いて床仕上げ面の水平を確認する。
足場等を撤去のうえ、片付け、清掃を行う。
備考
  • 補修工事に先立ち、管理組合(分譲共同住宅の場合)又は建物所有者(賃貸住宅の場合)を介して下階住戸居住者の承諾を得る必要があり、別途仮移転、住戸養生等が必要になる。
  • JIS形高力ボルト、トルシア形高力ボルトを使用する場合が多い。
  • あと施工アンカーを用いて補修を行う場合は平13国交告第1024号「特殊な許容応力度及び特殊な材料強度を定める件」に適合する必要がある。
  • あと施工アンカーを用いて工事を行う場合は、強度や耐久性等の品質を確保するために、「あと施工アンカー・連続繊維補強設計・施工指針」や「建築改修工事監理指針」等、適切な指針類に基づいて管理・施工する。
  • 鉄骨小梁に耐火被覆が必要な場合がある。
  • あと施工アンカーは地震時に抜け出す状態を想定し、鉄骨梁が落脱しないように措置を講ずる必要がある。
  • 鉄筋探査機等により鉄筋位置を把握し、躯体の孔あけ時に鉄筋を傷つけないように施工する。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 建築技術1990年3月号[p.150~154] 小柳光生 (株)建築技術
2 「あと施工アンカー・連続繊維補強設計・施工指針」 国土交通省住宅局建築指導課 国土交通省 HP
3

建築改修工事監理指針 令和4年版(下巻)[8章12節あと施工アンカー工事](国土交通省大臣官房官庁営繕部)

(一財)建築保全センター (一財)建築保全センター
4 各種合成構造設計指針・同解説(第3版)[第4編各種アンカー設計指針] (一社)日本建築学会 (一社)日本建築学会
5 公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和4年版 [8章12節あと施工アンカー工事](国土交通省大臣官房官庁営繕部) (一財)建築保全センター (一財)建築保全センター
6 コンクリート診断技術’23 基礎編[p312~313] (公社)日本コンクリート工学会 (公社)日本コンクリート工学会