補修方法編

設備からの騒音、振動 防振構造の自動ドアへの交換 V-3-305
RC造
工事概要

防振構造でない既設の自動ドアを防振構造の自動ドアに交換する。


断面図

平面図

自動ドア枠の施工例(chord作成)
防振対策を施している部分を赤色で示す。
対応する不具合と原因 不具合
  • 設備からの騒音、振動(自動ドア駆動時の振動による、コンクリート躯体からの固体伝搬音の発生)(参考:参考文献4)(V-3)
原因
  • 自動ドアエンジン部及びサッシ枠の防振措置不良 等(モーター本体、戸車の走行、戸当たり等の開閉機構から発生する振動)(参考:参考文献4)
適用条件
  • 防振構造の自動ドアは、一般自動ドアよりエンジン部分や縦枠部分の設置寸法が大きくなり、高さ及び幅が小さいドアとなるため、交換後においても支障がないこと。
  • 交換する防振構造自動ドアが歩行者用自動ドアセット-安全性(JIS A 4722:2022)に規定された試験方法により性能が確かめられたものであること。
工事手順の例
防振構造の自動ドアへの交換による補修方法の例を示す。
1.事前調査
当事者へのヒアリングを行うと共に、現場での騒音の発生状況を確認し、原因調査を行う。
原則として上階における騒音測定を行い、実態を把握する。
2.目標性能を満たした製品の選定
事前調査で得られた結果に応じて、目標性能を設定し、それを満足する製品及び仕様を製造所に確認し、選定する。(※1)
3.既存ドア及び周囲内装仕上材の撤去
自動ドアのドア部分を撤去する。
床材、天井ボードの施工状態を確認し、サッシ枠を交換できるよう必要な範囲の床材及び天井材を撤去する。
4.サッシ枠の取り外し
サッシ周囲の状態を確認し、下地モルタルをはつり、アンカー溶接部等をカッターで切り、サッシ枠を撤去する。
5.サッシ枠の取り付け
あと施工アンカーを使用して、取り付けアングルを躯体に設置する。
上部及び左右部に通し材を取り付ける。通し材は取り付けアングルに溶接し、固定する。
通し材の所定の位置に、サッシ枠と防振ゴムをボルト固定する。
エンジンの入っている無目カバーにシート状制振材を接着するか、またはロックウールを巻きつけ、カバーの振動によって発生する空気伝搬音を抑える。
自動ドアからの固体伝搬音を低減させるために、ドアの開閉速度を調整する。
6.内装仕上材の復旧
内装材を復旧する。
7.シーリング材の施工
シーリング材を施工する。
8.最終確認
工事全体の仕上がりを確認する。
養生等を撤去の上、片付け、清掃を行う。
原則として補修後の上階における騒音測定を行い、補修措置の性能向上効果の確認を行う。
備考
(※1)
目標性能については、「建築物の遮音性能基準と設計指針」日本建築学会編の集合住宅の遮音設計基準が参考になり、当該基準と同等程度の性能が確認される工法によるものとする。なお、性能の計測は公的な試験機関等で行われたものであることが望ましい。
  • 遮音補修は、許容できる騒音の程度には個人差があることに十分に注意して行う必要がある。少しでも音が聞こえている以上、うるさいと評価される可能性を持っている。
    したがって、遮音補修によってある一定の遮音性能を確保すれば万全ということではなく、ユーザーの要求や対象空間の音環境を十分調査する必要があるとともに、補修前に居住者等に十分に説明し、現状に対する騒音の低減の程度を理解してもらうことが重要である。(参考:参考文献2)
  • 既存の自動ドアの高さ及び幅と同寸法のドアに交換することが必要な場合は、ドア周囲の躯体はつり工事が発生する場合があり、構造上の検討等が必要な場合がある。
  • 防振ゴムの許容鉛直荷重の検討の上、防振ゴム部材の選定を行うこと。
  • 防振ゴムの風圧方向に対しての変位抑制を検討の上、適用すること。


施工上の注意点
  • 内装材(天井、壁ボード等)と自動ドア枠との取り合いには、クリアランスを確保し、すき間を設ける。すき間にはシーリング材等を充填する。
  • 防振ゴム材の取り付けスペースのために自動ドア枠材と躯体との間隔が大きくなるため、内装材もしくは化粧カバーでこの部分を覆う必要がある。
  • 自動ドアと取り合う壁はせっこうボード直張り工法を用いないこと。
  • アルミドアとスチールドアで、枠の納まりが異なる場合があるので注意する。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 音響技術No.121 [p39], No.130 [p3 表1,p4 3.4①] (一社)日本音響材料協会 (一社)日本音響材料協会
2 部位別・図解 木造住宅の防音リフォームマニュアル [p140 7.3] (財)日本住宅リフォームセンター(現・(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター) (株)彰国社
3 集合住宅の遮音性能・遮音設計の考え方 [p153~154 8.6] (一社)日本建築学会 (一社)日本建築学会
4 集合住宅の騒音防止設計入門 [p132~134] NPO法人建築音響共同研究機構 (株)学芸出版社
5 建築技術2016年2月 [p139] (株)建築技術 (株)建築技術
6 歩行者用自動ドアセット-安全性(JIS A 4722:2022)[6 試験方法] 朝日 弘 (一財)日本規格協会