補修方法編

降雨による漏水 屋上緑化土壌面と防水層端部の距離の確保 W-1-326
RC造
工事概要

屋上緑化システム(*1)において、植栽が接する、立上り保護のない防水層立上り端末から防水層の裏側に侵入した植物根を撤去したのち、防水層、保護コンクリート、耐根層、耐根層保護層等を再施工し、再度植物根が侵入しないようにするために土壌の埋め戻し高さを防水層立上り端末から150㎜以上低くして復旧する。(参考:参考文献1)

防水層立上り端末より侵入した植物根の様子
補修前の例(chord作成)
補修後の例(chord作成)
対応する不具合と原因 不具合
  • 降雨による漏水(W-1)
原因
  • 関連部位の防水処理不良
適用条件
  • 屋上緑化等荷重により構造上問題がない場合に適用可能である。
工事手順の例
1.事前調査
当事者からのヒアリングや現場での原因調査により、適用条件を満たしていることを確認する。
本補修では土壌厚が薄くなるため、既存の植物の育成等に支障がないことを確認し、必要に応じて植物やかん水装置を選定し直す。(*2、*3)
2.土壌と植栽の一時移動
土壌と植栽を一時移動する。
3.耐根層、保護コンクリート、防水層等の撤去
補修のための施工に必要な範囲にある耐根層保護層、耐根層等を撤去し、保護コンクリートも伸縮目地で囲まれた範囲を撤去する。(*4)
保護コンクリートの撤去後、防水層等を撤去する。
4.下地の補修及び下地調整 RC造W-1-324工事手順の例3に準ずる。
5.防水層の再施工
防水層は、防水工法及び補修方式に基づき再施工する。(RC造 W-1-304工事手順の例5の③に準ずる。)
6.保護コンクリートの再施工
撤去した保護コンクリートに伸縮目地が含まれる場合は、既存と同じ位置に伸縮目地を再施工する。(RC造W-1-304工事手順の例6に準ずる。)
保護コンクリート端部となる箇所に緩衝材を設置する。
伸縮目地を損傷しないように溶接金網を設置する。
保護コンクリートは、普通コンクリートを打込む。
7.耐根層・耐根層保護層等の再施工
既存と同じ耐根層を平場から防水層立上り端末まで再施工する。
防水層立上り端末部は、防水層及び耐根層等の上から防水層押さえ金物で押さえ、シーリング材を施工する。
平場の耐根層の上に耐根層保護層を再施工する。
耐根層及び耐根層保護層の既存部分と再施工部分が取合う部分は、各製造所の仕様に基づき施工する。
ドレン部分には土壌を流出させないための囲いを設置する。
平場の耐根層保護層の上に排水層を再施工する。
ドレン部分の囲い回り及び防水層立上りに接する部分に、排水補助通気パイプを設置する。
透水(フィルター)層を再施工する。
8.土壌等の再施工
屋上緑化システムの仕様に基づき土壌等を再施工する。
土壌面は、防水層立上り端末より150mm以上低い高さまでとする。(参考:参考文献1)
必要に応じて、かん水装置を設置する。
9.植栽の復旧
植栽を適宜復旧する。
10.最終確認
植栽の復旧が終了したことを確認する。
降雨時に浸水がないことを確認する。
備考
  • 屋上緑化システムまたは屋上緑化軽量システムについては、公共建築工事標準仕様書及び建築工事監理指針の「23章5節 屋上緑化」が参考になる。
    また、屋上緑化システムの排水層に用いる板状成型品及び屋上緑化軽量システムについては、公共建築工事標準仕様書で要求する品質を満たすものとして、(一社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」で評価した製品がある。
  • 緑化工事の施工時及び施工後の維持管理作業中の衝撃等により防水層が損傷するおそれがあるため、公共建築工事標準仕様書では、屋上緑化システムを適用する場合の防水層は保護コンクリートのアスファルト防水のみとしている。(参考:参考文献1)しかし、同仕様書には「民間工事では、各種防水層の上にも、屋上緑化システムが施工されている場合がある(引用:参考文献1)」とも記載されている。
  • 本補修方法のほかに、防水層立上り端末に植栽が接しないように、見切り(土留め)を設けて、土壌と防水層立上り部の間に平面的な離隔距離を確保する方法などがある。

*1 屋上緑化には、耐根層、耐根層保護層、排水層、透水層及び土壌層から構成される屋上緑化システム(参考:参考文献2)と同構成で主に特殊成形パネル等のユニット化されたシステムを用いた屋上緑化軽量システム等がある。
屋上緑化システムは、草本類だけでなく低木から高木までの木本類も植栽できる基盤で構成されることから、土壌も厚く質量も大きくなる。
屋上緑化軽量システムは、セダム類等の地被植物、芝、コケ、草花等が中心となる。
なお、屋上緑化軽量システムの植栽基盤の質量は、公共建築工事標準仕様書では60kg/m2以下とすると規定している。(参考:参考文献1)
*2 屋上緑化における必要な土壌層の厚さは植物の種類等によって決まる。植物の種類と土壌厚による生育状況の相違は下表の通りであり、凡例Cに相当する土壌厚が望ましい。(引用:参考文献1)
植物の種類と土壌厚による生育状況の相違(引用:参考文献1)
06_RC補-08_W-1-326_6_*2.jpg
*3 屋上緑化に用いられる土壌には、自然土壌、人口軽量土壌及び改良土壌がある。各種土壌の特徴等は以下の通りである。
土壌の種類と特徴等(引用:参考文献1)
06_RC補-08_W-1-326_6_*3_2022

*4 「撤去工法」は、工事に伴う騒音、振動、粉塵、降雨時における漏水等が問題となる可能性があるため、工事の実施にあたっては、居住者に工事内容を十分に説明し、合意を得ることが重要である。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 建築工事監理指針 令和4年版 (下巻) [p915(23.5.1(1))、p916(23.5.2(1))、p917(23.5.2(2)表23.5.1)、p921(23.5.3(1)(オ)(b)、表23.5.4)、p927(23.5.4(ウ))](国土交通省大臣官房官庁営繕部) (一社)公共建築協会 (一社)公共建築協会
2 公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和4年版[p409(23.5.2(1))](国土交通省大臣官房官庁営繕部) (一社)公共建築協会 (一社)公共建築協会